@sotaono
2026年7月20日
p10
「「私は、デミアンといいます。」」
p12
「「エジプトで、ロイディという名のロボットを輸送しましたね?」」
p15
「カタナと呼ばれるものだ。」
p17
「「君は、ロボットだろう?」僕は、彼に尋ねた。」
p18
「「この世で、また会いましょう。」」
p25
「ロジは、顳顬に片手を当てた。」
p27
「「そうそう、背が高くて、若い人でしょう?うん、金髪で青い目の。」」
p30
「人間かどうかを見分けるための、僕が持っている技術は、統計的なデータに基づいたものだ。その種のデータには、常に例外が存在するものだ。」
p33
「僕たち二人は、ドイツの市民として登録されている。ここに移り住んで、一年と七ヶ月になる。」
p34
「「問題は、デミアンがロイディについて口にしたことだ。」「どうして、私たちがここにいることがわかったのでしょう?」」
p36
「「ドクタの見立ては、いかがでしょう。」僕はまず首を傾げた。ドクタとは、僕のことらしい。」
p38
「それは、僕とロジが一般的な市民ではないためだ。」
p38
「ロジも、まだ指示を受けていないはずだ。」
p40
「最後の言葉は、「また、お会いしましょう。」だった。」
p49
「僕の身を守るのが、彼女の役目だからだ。」
p50
「ペガサスというのは、日本政府の中枢を担う人工知能の名である。」
p51
「「彼が、ロイディについて話したことです。日本でもトップシークレットで、知っている者は数名でしょう。情報が漏れるとしたら……。」「モレル。」僕は、そう言って微笑んだ。ロジも笑った。」
p53
「「マガタ博士が、デミアンを欲しがっている、という意味。」」
p53
「ただ、僕が作ったものに対しては、調理を始めて一週間後から褒めてくれるようになった。これに気を良くした僕は、ほぼ毎日キッチンで作業をする習慣になったのだ。」
p54
「「あ、先生。」ロジが呼んだ。「名前で呼ぶと決めたはずだけど。」僕は振り返った。「ここは大丈夫です。」」
p54
「誰が来るのかはわかった。久しぶりだな、彼女に何をご馳走しようかな、と考える。今日使う食材のうち、あれとあれを残しておこう、と演算した。」
p55
「「グアトの命が狙われるとは、考えていません。」ロジはこちらをちらりと見た。「あるとしたら、誘拐でしょう。気をつけて下さい。」」
p58
「僕のすぐ横に、白いドレスの女性が立っていた。長い黒髪はバックの闇にすっかり同化していて、周囲の照明の光を反射していない。影もなく、平均的に霞んで見えた。」
p59
「「デミアンが、先生のところへ来た理由を知りたい、と思っていらっしゃるのでしょう?」彼女は、一歩前に出て、こちらを向いた。青い目の視線が、精確に僕を捉えた。サファイアのように澄んだブルーだった。」
p61
「「さすがに、演算が速い。」彼女は微笑んだ。」
p61
「「青い目の女性に会った、という夢を見ていたんだ。」」
p62
「「誰?サンタクロース?」僕は呟いた。「サンタクロースです。」ロジが真面目な表情で答える。」
p63
「「今から、君のところへ行こうとしているんだ。」顔を上げて、老人は言った。にやりと笑って、指を一本立てる。顔の変化のし方に、見覚えがあった。」
p64
「「この世というのは、あの世ではない、という意味だ。」」
p65
「明日来る予定になっているのは、ウォーカロンの局員である。彼女が、僕とインドへ行ったとき、そのロボットを倒した。緑のオイルを流して、ロボットは息絶えた。」
p68
「「そう……。デミアンがロイディのことを捜しているのは、自分のルーツを知りたいからだ、と。」」
p68
「「デミアンのルーツは、ロイディなんだ。つまり、彼は、自分の頭脳以外の頭脳を内蔵している。」」
p71
「僕は、彼を知っている。ドイツが誇る科学者ハンス・ヴォッシュ博士である。僕の倍も生きている大先輩だ。」
p72
「「久し振りだね。キョート以来かな?」」
p73
「「ドクタ・クジだよ。知っているかね?」「クジ・マサヤマですか?」」
p80
「「彼女は、もともとはフランスにいたようだが、どういうわけか日本に移ったそうだ。彼女自身、どういった経緯だったか思い出せなかったのだが、ただ、私にこう言った。ロイディについていった、と。」」
p84
「「いや、根拠はない……。じゃあ……。あ、マドモワゼルも、えっと……。」「ロジです。」「おお、ドイツ名か。私の好きな名だ。ありがとう。会えて嬉しかった。」」
p85
「不確定なものが簡単な手続きで解除するならば、けして躊躇はしなかったはずだ。今は、それをしない僕がいる。僕も、そんな沈黙を覚えた。」
p85
「なんとなくではあるけれど、彼女が僕を許してくれているような気がするのだ。許すという言葉は、もしかしたら不適切かもしれない。見逃してくれているのではなく、認めてくれている、に近い。そんな温かみを感じるから、僕も彼女に無粋なことはきかないようにしよう、と思った。たぶん、そんなところではないだろうか。」
p86
「「いや、違う。でもね……、人間、どうなるかわからない。うん、たとえば、私が明日にも死んでしまうかもしれない。その場合、君はどうする?考えている?」「そんなことを考えていたら、生きていけません。それ以上変な話をしたら……。「どうする。もう見切りをつける?「いや、泣きます。」」
p89
「人工知能との情報交換は、今はオーロラ経由で行っている。」
p93
「「セリンです。」「セリン?へえ……、あまり変わっていないね。もしかして、綴りは同じ?」」
p93
「知らないのだから、知らないと答える。彼女の発言は、常に正直で、おおかた最適だ。僕は、こういうところを高く評価している。」
p95
「「デミアンの関係かもしれない。」」
p96
「ロジとセリンは、抱き合ってお互いの嬉しさを伝達し合ったようだが、僕は握手をしただけ。」
p98
「「先生のことをご存じだからではありませんか?」セリンが言う。「グアト。」ロジがセリンを見据えて囁いた。」
p100
「伝統的な日本刀でないことは確かである。」
p101
「おそらく、このトランスファに、運動する実体を加えたような存在なのではないか、とぼんやりとした想像をした。」
p106
「英語で<Super artificial power>とある。超人工力とでも訳すのか。「それが、デミアン・プロジェクトのテーマでした。」」
p109
「「デミアンに似ている、と思いませんか?」」
p111
「「その王子の頭に、脳はありましたか?」ヘルゲンがきいた。」
p121
「メインはグラタンで、二人とも「これは何というのですか?」と驚いた。」
p121
「「ナクチュの神殿に、デミアンが現れました。」」
p124
「ナクチュの神殿の近くに着陸し、区長であるカンマパ自身が出迎えてくれた。彼女は全然変わっていない。まったく以前のとおり、若々しく美しいままだった。」
p124
「カンマパが出向くと、神殿内にジュラという名の者が眠っているはずだから面会したい、と言った。そのときに、デミアンと名乗ったらしい。」
p129
「ここのクイーンだといっても良いだろう。」
p130
「「あの……、彼が、王子と似ていると思いましたか?」僕は尋ねた。「え?」カンマパは、口に手を当てる。びっくりしたようだ。」
p131
「僕自身、王子も、そしてデミアンも、カンマパに造形が似ていると感じていた。掘りの深い目許などが、特にそうだ。」
p131
「「あのように撃ち合わなければならぬのは、何が不足しているのでしょうか?お互いの理解、愛、それとも、血ですか?」」
p132
「「目にすれば失い、口にすれば果てる」と言われているもの、それが神だからだ。」
p132
「「ロジとセリンの間くらいの年齢かな。」「口にすると果てますよ。」ロジが素早く反応した。」
p133
「僕自身、蘇生した王子が現在どこにいるのか知らない。知っている者は限られている。僕の友人の一人は知っているかもしれないが、彼は今はその仕事から離れ、アメリカへ行っているはず。」
p137
「「でも、王子は眠ったままです。あ、もしかして、デミアンが行けば、王子が目を覚ますのでしょうか?」」
p138
「僕とロジにしてみれば、情報局のニュークリアから出て以来の帰国である。」
p139
「「せっかくドイツへ行けたのに、すぐに戻ってきてしまいました。」」
p140
「「そうですね。仮説ですが、ジュラの頭脳がデミアンに移植されたとすると、デミアンの中のジュラの頭脳は、自分の躰に戻りたいのではないでしょうか?」」
p141
「ロジの「まとも」は、けっこう基準が高い。大半の人間がまともではなくなる、もちろん、僕も含めて。」
p143
「「未来の日です。」セリンが答える。」
p144
「「蘇生したナクチュの王子です。意識は回復しておりませんが、生体としては健康です。」」
p147
「「ありがとうございます。」ここは来て、最も価値のある情報だった。」
p154
「「囮だったんだ。」」
p159
「「トランスファが一緒だね。それから、脳も二つある。だから、一人といえるかどうかという問題はある。」」
p165
「「王子のボディくらい、頭の持ち主に返してやれば良いのでは?」「そうですか?それが正義ですか?」「いや、正義というよりも、人情的に。」「人情?正しかったら、下さいと言えば良いのです。」」
p174
「デミアンが空中に浮かんだ。白い大きなものを抱えている。王子のボディのようだ。ほぼ、二人が抱き合うように重なっている。」
p184
「「私が誰かに褒められたら、先生は嬉しいですか?」「は?先生じゃなくて、グアトだけれど。」「嬉しいですか?」「自分のことのように嬉しくないが、ロジのことのように嬉しいかもしれない。」」
p184
「「潜水艦は、フランス船籍で、民間企業が所有しているものだそうです。」「フランスね……。モレルしはフランス人だ。」僕は言った。」
p194
「猫のようだ。」
p195
「「おぉ、ミチルじゃないか。」モレルが高い声を上げた。「そうだろう?」」
p195
「「私は、グアト、こちらは妻のロジです。」」
p196
「「デミアンだ。そうだろう?」」
p198
「「おや、マダム……。」モレルは、顔をこちらへ向けた。「あんた、わしと会ったことがあるかね?」」
p198
「「ヘルゲンさん、あんたが考えているほど、これは単純じゃないんだよ。デミアンは、天才なんだ。実に複雑な天才だ。ウォーカロンの天才だ。わしごときが操れる御仁じゃない。」」
p199
「「もう、十年以上になるかな。知合いではあるが、親しいわけではない。あれは、なんというか、恐ろしい男だ。可愛い顔をしているが、悪魔だよ。深入りすると、命を取られるだろう。そのかわり、世の中で手に入るすべての富と知恵を与えてくれるかもしれない。」」
p200
「「いや、まだ寝るつもりはないよ。大丈夫、話につき合おう。物語は大好きなんだ。滅多にあるものではない、こんな機会は……。嬉しいね。人間と話ができるなんて。」」
p203
「「奴は、うーん、もっと自由だ。自分のしたいことをしている。知りたいことを知ろうとしている。あれはな、研究者なんだ。言ってみれば、わしから一番遠い人種だな。」」
p205
「猫はこちらを見ている。さきほどの猫ではない。毛色は黒。目はグリーンだった。」
p205
「右から現れた人物は、長身で金髪。リュックを背負っていた。」
p208
「「ご助言ありがとうございます。ドクタ。」デミアンが、僕に視線を向ける。「その後、マガタ博士から連絡がありましたね?」」
p209
「「いえ、ありがとうございます。ドクタには、ご理解いただけるものと信じていました。その根拠は、オーロラを救った方だからです。」デミアンは、そこで頷くような仕草を見せた。「はい、生きていきます。そこが私の問題です。王子をこの手に抱くことで、私は感じました。たとえ意識がなくても、人間は生きているのだと。意識がいかに大きな存在であるかを、ずっと考えておりましたので、それをゼロにする行為は、すなわち肉体の死に等しいと思い込んでいたのです。でも、そうではない。たとえば、日本には禅の教えがあります。意識をゼロへ、自然に寄り添うことを教えています。それは死ではない。むしろ、それこそが本来の生である、と考えるのだと思います。これには、私も感銘いたしました。雑念が多い自分を、今は恥ずかしく思っています。」
p212
「デミアンは、やはり人間なのではないか。人間にしたい、という願望ではない。むしろ、人間だったら、少しだけ、がっかりかもしれない。」
p222
「マガタ博士が提唱する共通思考とは、そのイメージなのではないか。」
p224
「「名前」というものを人間は「理解」と捉えるが、人工知能には一過性の「処理」でしかない。」
p225
「僕が想像したのは、裏返しの人間、裏返しの肉体だった。」
p226
「内側と外側の連続は、メビウスの帯のように捩じれをイメージさせるが、そうすることでしか、実空間と電子空間に同時に存在することはできない。こちらからみれば一人の青年だが、むこうから見れば、一人ではないかもしれない。」
p227
「マガタ博士が言った「ルーツ」とは、そのことかもしれない。」
p227
「日本語で、思考と試行が同じ音なのは、恐るべき連想といえる。」
p231
「「日本にいらっしゃったときに、お会いできるものと期待しておりました。」オーロラは言った。「お久しぶりでございます。」」
p234
「「まあ、思うという現象が、曖昧です。トランスファは思うのですか?」「思います。」」
p239
「「理由なんかどうだって良い。彼が亡くなるなんて、どうかしている。立派な人物だった。もの凄く惜しい。」」
p245
「ベッドに横たわっている人間には、頭部がなかったのだ。」
p259
「「兄に幸あれと。」」
p259
「四人は、二十秒間ほど黙禱した。言葉ない。各自が自分の言葉で祈ったのだ。僕自身は、おそらく、この祈りをデミアンは知っている、そして、この祈りを叶えてくれるだろう、と考えていた。」
p261
「「デミアンです。」ホログラムの像が言った。「夜分に当然、申し訳ありません。」」
p263
「「ヘルゲンは、生きています。」デミアンは言った。」
p263
「「ミュラ、私を見なさい。隠れていないで。」デミアンが言う。」
p264
「ミュラが高い声できいた。「あなたは、誰?」「私は、ヘルゲンだ。」デミアンが言った。」
p279
「人間というのは、現実を変えてしまうために、忙しく知恵を使う生き物のようだ。」