ピエ "バーティミアス (1) サマ..." 2026年7月19日

ピエ
ピエ
@pie_202
2026年7月19日
バーティミアス (1) サマルカンドの秘宝
バーティミアス (1) サマルカンドの秘宝
ジョナサン・ストラウド,
松山美保,
金原瑞人
実に15年ぶりくらいに再読。 小中学生の頃は何度も読み返していたが、大きくなってから読むとまた違う切り口で読めて面白かった!いやこの本は本当に面白いよ… 時は現代(1990年代後半くらい?)のロンドン、見習い魔術師であるナサニエルと、彼が分不相応に召喚した中級クラスのジンのバーティミアスの物語。 この世界の魔術師の扱う力は、複雑なペンタクルを描き、難しい呪文を正確に唱えて妖霊を使役することが中心にある。ペンタクルや呪文にほころびがあると、それが妖霊に対する隙となり、命を取られかねない。 魔術に対するコストやリスクがかなり高い世界だが、その分、それを行使できる魔術師は極めて強い権力を握っている。 子供の頃は「首相」や「国会」という言葉から民主主義社会をイメージしていたが、実際は魔術師による寡頭政治が行われており、一般人の地位は著しく低いことが今なら分かる。常に路上を監視している「光の玉」や夜間外出禁止令など、独裁あるあるな描写も多い。 大人も楽しめるシビアな世界観だが、バーティミアスの軽妙な語り口が、万人に読みやすい物語に仕上げている。かれは非常にお喋りなので、ページ下にちょくちょく注を挟む独特のスタイルで書かれているのだが、この世界の事情や歴史を補足してくれるこの脱線が本当に面白い。私が後に『白鯨』(語り手による注が信じられないほど長い)を好きになったのも、バーティミアスシリーズでこのスタイルに馴染んでいたからかもしれない。 ただ、バーティミアスの下ネタや皮肉は10歳の子供にはよく分からないものもあったので、当時の疑問を思い出してフフッと笑ってしまった。 今読むと、ある行動をきっかけに、バーティミアスがナサニエルを見直したことがよく分かる。ナサニエルはあまり変わらないのだが、バーティミアスの態度が若干軟化したことで、乱暴だが面倒見の良い兄ちゃん的な感じになり、二人がバディになり始めていくのが良い。 私は食料品店のバンを強奪するシーンが大好きなのだが、今回も先の展開を全部知っているにもかかわらずずっとクスクス笑ってしまった。終盤のテンポの良さはシリーズ屈指であり、シリアスとコメディの緩急の付け方が本当に上手い。 ところで、この理論社刊は表紙が本当にかっこよかった。都心の大きめの本屋の入り口に山積みにしてあったのに一目惚れし、母にせがんで買ってもらったのをよく覚えている。絵の部分がエンボスニス加工されていたり、カバー下が古ぼけた羊皮紙を思わせる装丁だったり、読む前から本当にわくわくした。重い本だが、家まで持って帰るのが全く苦にならなかった。 当時はハリー・ポッターブームもあり、こういう分厚い児童書が沢山出ていて良い時代だったな…今は静山社が文庫を出しているのを店頭で見かけたが、表紙がコミカルすぎて少しう〜んとなってしまった。
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