こた "ワタシ弁護士、依頼者に襲われ..." 2026年7月20日

ワタシ弁護士、依頼者に襲われました。
被害者になった弁護士が刑事手続の中で修復的司法の実践をしようとした軌跡が描かれた本です。 中田雅久さん(弁護士)と森久智江さん(刑事政策の研究者)との対談形式で、終始軽いテイストでスルッと読めてしまいます。 その軽やかさとは対照的に、日本の刑事司法は、社会制度として、社会の課題を解決できているのかという重い問題が取り扱われています。 中田さんは刑事事件の元依頼者からサバイバルナイフで襲われて、傷害事件の被害者となりました。 中田さんは、私の知る限り、もっとも優れた刑事弁護士のひとりです。 そんな刑事手続をよく知っている中田さんだからこそ、単に刑罰を課し、刑務所に収容するだけのものでは、自分のニーズ(その元依頼者から自分や同僚、家族などが二度と脅かされないために対策を立てることや、なぜ前回の刑事手続終了後も支援者であった自分のことを襲うに至ったのかを知ること)が満たされないことがよくわかっています。 そこで、中田さんは自ら被害者参加の制度を利用しながら、加害者との対話を試みました。 そのチャレンジは必ずしも十分にうまくいったとは言えないものの、エラーの中から日本の刑事司法の課題が浮かび上がります。 森久さんに拠れば、修復的司法(Restorative Justice)は、「伝統的な応報的司法に対するアンチテーゼとして、犯罪行為によって生じた「害(harm)」を、対話と修復によって克服する、という消極的な特徴」と「犯罪という現象への社会的対応のあり方を変える」、「社会を構成するわれわれ自らが、加害者や被害者をはじめ、犯罪行為にかかわる当事者やその関係者等と、立場性を固定することなく対話することによりその背景や文脈を知ること、対話においては単一の結論を導き出すことではなくそこにある社会課題を共有することが重視される」「「社会変革理念」としての……積極的な特徴」とによって構成される考え方です(本書205頁)。 法律家が自分たちで勝手に規定した役割に閉じ籠って仕事をこなしているだけでは、紛争解決ツールとしての司法は市民から選ばれなくなるという危機感があります。 加害者も被害者も多様で、それぞれのニーズは様々です。 社会課題が犯罪現象を生み出している面もあります。 こうしたことに目を瞑らない、中田さんのしなやかな仕事ぶり、生き方に魅かれました。
ワタシ弁護士、依頼者に襲われました。
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