ぱぬ "妊娠カレンダー" 2026年7月20日

ぱぬ
ぱぬ
@OnAkAsuitA_pp
2026年7月20日
妊娠カレンダー
初めての小川洋子さんの作品。大昔、博士の愛した数式は映画だけ見たことがあったのだけど、小説は読んだことがなくて、今回初めて読みました。 全体を通して、とにかく無駄な言葉がなくきゅっと密度の高い、それでいて透明感のある文章が本当に素敵。物語全体が常に不穏な空気を纏っているはずなのに、それが不思議と和らぐ感じ。それでいて温度感を感じさせないから、描かれる空気を自由に解釈できるような。 妊娠カレンダーは、日常に潜む隠れた狂気の描かれ方がとても印象的だった。姉もそうだけど、姉の旦那もかなり私とは波長が合わない。つわりで気分が悪いという姉につられてしまう旦那も、めかしこんで受診に行く姉も、とにかく全てがちょっとずつずれている。積み重なる不和に、こちらの気も滅入りそうになった。この2人とリアルに生活していて、グレープフルーツのジャムだけで済んでいるの、ある意味すごいかも。 ドミトリイはかなり印象的だった。私は、天井裏にあったのは本当に蜜蜂の巣だと思っていて、先生のことをつい殺人犯かと疑ってしまった自分の気持ちが愚かしいとすら感じたのですが、それは幻覚で実は…という意見も多数あったのが面白かった。それにしても、先生のことを何処か聖人のように感じていそうな主人公にも終始違和感があった。私はもしかして、その違和感にすっかり取り込まれてしまったのかもしれません。 夕暮れの給食室と雨の日のプール。こんなに全てを投げられた、委ねられたと感じたのは初めてだった。色鮮やかな風景が浮かぶ中で、問題の親子だけはどうしてもセピアでしか想像できなくて、常にうっすら気持ち悪い世界でした。なぜそれを話したの?それで終わりなの?と思わせる父の語り草に、ある種健常ではないような、ほんの少し何かがずれている奇妙さを感じました。 小川洋子さんの文章がとにかく好きだと感じたので、また別の作品も読もうと思います。薬指の標本が気になる。 2026/7/20
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