糸太
@itota-tboyt5
2026年7月25日

イザベラ・バードのハワイ紀行(868)
イザベラ・バード,
近藤純夫
読み終わった
幸せな読書時間だった。本を開けばハワイ。しかも時は19世紀なのだ。訳が良いのか、イザベラさんの見たであろう景色が、頭の中に無理なく広がっていく。
大自然の迫力や美しさもさることながら、とくに興味深かったのは、先住民に対するその時代ならではの眼差しである。
人の命すら生け贄として捧げることを、当たり前にしてきた社会がある。この島を訪れた初期の伝道者たちは、キリスト教の価値観を広めることで、先住民たちが「人間らしさ」を獲得していくことに、宗教的な使命とともに喜びを感じていたことだろう。
上から目線で価値観を押し付けるやり方には、現代から振り返れば、批判があって当然である。しかし、この当時の常識として、「未開人」を「救って」あげているんだ、という感覚を共有していたことは、よく理解ができた。
キャプテン・クックから百年後のイザベラさんにも、この感覚は色濃い。ハワイの素晴らしさをこれでもかと書き綴った一方で、ハワイでの暮らしについては同胞にはお勧めしないとしている。
時間の感覚すらも失ってしまうほどの快適な楽園にあっては、「真の議論と対話を呼び起こすような西洋諸国の知的な動向が心に入りこむことはない。理由の一つには信義の相違があるが、気候が生む怠情や、精神的な刺激の欠如も関係している」という。つまり、西洋的な進歩を無意味化してしまうような、ある種、麻薬に近い魅力あふれる地としてハワイを紹介しているように思える。
フラに言及がなかった点も意外だった。(補論の「ハワイの歴史」に、カメハメハ五世が「フラにうつつを抜かして」といった表現はあるが、それも随分な言い方である)
たしかに現代フラは、カラカウア王の後に確立されたものなのかもしれないが、神に捧げるようなカヒコにも全く触れられていない。偶像崇拝の最たるものとして、語るに足りないものと見なされてしまったのかもしれない。
個人的にはコナに行ってほしいなと思いながら読んでいた。最後の最後に寄ってくれたので、かなり興奮したが、イザベラさんにはあまり印象が良くなかったようだ。残念。


