
suivre le fil de l'eau
@Nymph_of_lilly
2025年3月29日

あなたと原爆~オーウェル評論集~ (光文社古典新訳文庫)
ジョージ・オーウェル
読み終わった
オーウェルはナショナリズムを母国愛(patriotism)と区別し、ある特定の場所や生活様式への愛着ではあるが、その愛着を人に押し付けようとはしない態度である母国愛に対して、ナショナリズムは攻撃的で排他的な「自己欺瞞によって強化された権力への欲望」であると主張する。
どんな犯罪行為でも、絶対に、「我々の」側が犯した場合に見逃されえないものなどない。たとえその犯罪行為が起こったことを否定はせずとも、たとえその犯罪行為が他の場合には自分が非難したことのある行為とまったく同じ犯罪であったとしても、たとえ知的なレベルにおいてはそれが正当化しえないと認めていても、それでも人はそれが間違っていると感じることができない。忠誠心が関わったとたん、憐れみの心ははたらきを止める。(⋯)あるいはまたこういう議論さえ可能だろう。偏りのない見解なんてものは絶対に不可能だし、すべての主義や信条には同じ嘘や、愚かさ、野蛮さが含まれている、と。そしてこれはしばしば政治から完全に距離を置いて関わらないことの理由として提示される。しかし私はこの考えを受け入れない。現代の世界ではインテリと呼ばれるような人間は誰であろうが、政治を気にかけないという意味で、政治から距離を置いて関わらないことは許されない。(「ナショナリズム覚え書き」, pp.191-193)
