
ユメ
@yume_bookworm
2026年7月15日
読み終わった
感想
今作の主人公は、シリウスの新入社員として池袋店に配属された高坂あかり。希望を胸に入社した彼女が、飲食業界の厳しい現実に直面してゆく姿を見て、自分が学生時代に飲食チェーンでアルバイトをしていたときのことを否応なしに思い出した。休日は朝から晩までというシフトが当たり前で拘束時間が長く、仕事そのものはやりがいがあったが体力的にきつかった。学生バイトの身であった私でもそうなのだから、社員の方々は遥かに大変そうだったことを今でも覚えている。だから、この仕事を続けているひとには尊敬の念が絶えないし、あかりが落ち込んでは立ち直ることを繰り返すのを心から応援しながら読んだ。
シリウス池袋店といえば、前作の主人公だったいつきが店長を務めている店舗だ。いつきが優しくあかりを導く姿を見て、彼女もまた色々思い悩んでいたことを知っているだけに、そのいい先輩ぶりに胸が温まった。かなめやつぐみも登場するのも嬉しい(みもざにもまた会えたらいいな)。キッチン常夜灯での彼女たちとの交流が、あかりに変化をもたらしてゆくのがよい。
キッチン常夜灯でシェフが振る舞ってくれる料理の数々は、今回も実に美味しそうだ。中でも、ホワイトアスパラのビスマルク風、ステークアッシェ、ムール貝のシードル蒸しに惹かれる。私も疲れた夜に常夜灯に立ち寄れたらな、と夢見ずにはいられない。常連客の「美味いものを食べなきゃ、人生なんてつまらないからなぁ」という台詞が印象に残った。

