蓮
@yulan
2026年7月30日
帰れない山
パオロ・コニェッティ,
関口英子
読み終わった
山との縁がなくとも、共感が多く湧き起こる作品だと思う。映画を観たときも、胸の奥に重石を抱えてしまうような切なさと苦しさで、つい目を細めてしまうほどだった。だがこの読書では、淡々としながらみずみずしく…多分あとがきでいう“精緻で豊かな表現”によって、情景がしんと沈み込み、己の思い出が引き出されるような不思議な感覚があった。きっとピエトロとブルーノを見つめながら、己の帰れない山、帰れないあのとき、流れ去った川下を、思い起こして投影してしまうのだろうと思う。
そのなかで、さりげなく、水辺を好むピエトロがずっと変わらないところや、植物のようにたくましい母のひたむきさなどには愛おしささえ感じた。そんなふうにいつまでも変わらないものもある。
地の文が読みやすく相性が良かったのは個人的に特筆すべきだ。たまに会話が生み出すリズムが恋しくはなったが、とても良い出会いだった。