@sotaono
2026年7月29日
P21
「「自然に生まれたものですから、自然に滅ぶというわけですね。」「人間が関与したとしても、運命の時間を、ほんの少し早めたり、遅らせたりするだけのことでしょう。」」
p27
「デボラというのは、日本にいたときに交流のあったトランスファの名だ。」
p30
「レトロな表現を用いるならば、すべての個人は社会という運命共同体の要因なのだ。」
p31
「ヘレン・インゼルとは、湖に浮かぶ島の名である。」
p35
「理由というのは人それぞれだ。個人がどんな願望を持っているか、どんな動機で行動するかなんで、平均的な範囲を示しても意味がない。」
p53
「「デミアンみたいに?」僕はきいた。以前に関わったことがあるウォーカロンだが、今はドイツ情報局の下で働いているそうだ。」
p60
「「それは、つまり、動物のウォーカロンだよいうのですね?」」
p75
「「端的に申し上げれば、人間らしくないからです。」ヤーコブは答えた。「しかし、それが本来の人間なのかもしれません。」」
p75
「「なんでも特定したがるのは、人間の悪い癖だ、と言われた。」」
p82
「「広い知識を持つことで、未来には人類を豊かにするものが生まれるのだ、との認識が不足しているのでしょうか?」」
p86
「「こちらの檻にいた動物が一頭、いなくなりました。飼育員も行方不明です。」キンケルが言った。」
p91
「何故このように不自由な状況になるのかといえば、それは人間という動物が、常に鬩ぎ合いを好むからだ。他者を出し抜こう、自分の拙さを隠そう、と余計な労力を使う。結局は、自分がどう思われているのか、という他者の評価を気にする。これが自由に活動することに対して大きな摩擦として働く、といったメカニズムだ。」
p94
「「たとえば、恋人を愛おしく感じるのだって、自分の頭の中に投影されたシンボルが、感情や理解の対象になっているように思うけれど……、どう?」」
p95
「「そもそも、グアトと私は、生きているリアルが違うのですね。」ロジが眉を寄せた。彼女のその表情はほんの一瞬だったけれど、僕の脳裏に焼きついた。」
p100
「「私が特別なのか、それとも、みんながそうなのかわかりませんが、自分の生い立ちを重く背負っている人の方が、むしろ不思議な存在に感じます。」」
p101
「「過ちというのは、忘れたから繰り返すものだとは思えないけれどね。」」
p111
「星を眺める動物は、地球上では人間だけだろう、と想像した。人工知能はどうだろうか。」
p112
「振り返って、ペネラピを見た。まったく見覚えがない顔だが、じっと目を見つめていると、口の形を少し変えた。その表情の変化に心当たりがあった。」
p118
「「びっくりしました。」彼女の目が赤く光っていた。」
p121
「「シャチか……。」」
p145
「科学者は、未来を悲観して手を打とうとするが、多くの人々は、我慢さえすればなんとかなる、と楽観して神に祈ることしかしない。」
p149
「人間というのは、本当のところ、人生の経験から得た知識をどの程度、自分のために使っているのだろう。」
p150
「森の中に回転木馬があった。」
p155
「「恐竜。」」
p167
「ロジはそう言うと、少し舌を出した。やはり、機嫌が良いようだ。」
p170
「このように、勝手に想像して事実を問い質さない習慣が身についている。」
p172
「シャチがレストランで暴れ、宮殿と動物園はミサイルが着弾、遊園地では恐竜が闊歩、おまけにドライブインで強盗に遭った。」
p181
「「現代の人たちは、どんなものでも信じてしまえる一方で、自分に都合の悪いものは受けつけません。」」
p191
「「ジョン・ラッシュというイギリス人、技術者らしい、年齢は百三十七歳、ドイツに別荘を持っている。」」
p200
「植物は枯れるから種を残す。死ぬから生まれる。成長することも老化することも、同じ現象であり、それは人類だけでなく、すべての生命の遺伝子に組み込まれたプログラムだった。そのプログラムから逃れようとすることは、パラダイム・シフトにはまちがいないが、しかし、そこで失われるものが必ずあるだろう。それを予感させるものも、このプログラムによる自己防衛反応に過ぎないのか、それとも、大いなる絶滅の危機に対する最後のストッパになりうるものなのか。」
p202
「「むしろ、周囲の人たちと一緒に生きていると自覚している一般人の方が、傍観すれば、意見や知識を交換せず、一人で生きている、いわば孤独な生活といえます。我々人工知能は、そのように評価しています。」」
p203
「キャサリン・クーパ博士である。」
p204
「「人間が絶滅しても良い、と考えたのでしょうか?」」
p206
「「たとえ、証拠が見つかっても、なにも事態は変わりません。」クーパが言った。「時間を戻すことはできない。社会を変えることもできません。責任者を追求して、罪に問うことができたとしても、救われるものは、何一つありません。」」
p207
「「人は死を想うものです。」彼女は言った。「死を想うからこそ、優しくなれる。正義の根源はそこにありました。死を想像できない者は、もはや人間ではないかもしれません。」」
p208
「「常に新しいもの、変化することを求めているのに、あたかも最終目標が存在すると信じる、その矛盾です。」「そう、それは、つまりは言葉なんです。」僕は言った。「理想という言葉ができたときに、理想の定義が固定される。」」「はい、そのメカニズムです。」
p217
「何が実体化、どこに本質があるのか、それを確かめなければならない。」
p218
「「ミスを許せるし、つぎつぎと失敗ばかりすルシ、なにをやっても裏目に出たり、ちょっとしたことを見逃したりして、後悔ばかりするし……。でも、それをひっくるめて許せる。だって、許せないと、リカバできないじゃないか。つぎからつぎへと訪れる失敗を、こつこつと修正していく。やり直して、考え直して、修復する。ミスに苛立っていたら、リカバが遅れる。諦めている暇もない。そうしていると、なんとなく、知らないうちに、完璧というものに近づける。それが、完璧主義者なんだ。」」
p230
「どんなことも、起こりうる。いかなるものも、現れる。信じられないことも、起こりうる。人間が想像できる範囲は、無限に近い。あらゆる可能性がヴァーチャルには存在できる。しかし、実際には、リアルの枠を、ほんの僅かに広げただけだ。どこかに、もっと想像的な新世界があるのだろうか。そういったところで行きたいという欲求を、人は持っていないのか。」
p239
「「ジョン・ラッシュだったんだ。」」
p250
「格好の良い言葉には、忘れたい苦い過去がつき纏うものだ。」
p252
「「あれは、ヒョウかな?」」
p261
「「その疑問は秀逸だ。その俯瞰こそ、人類の叡智だね。」」
p266
「この際だから、ヴァーチャルでは僕が銃を持って敵に立ち向かっていき、彼女を守るようなシチュエーションがあっても良いだろう。考えただけでも、身震いするほど革命的な新世界である。」
p267
「「ラッシュさんですね?」」
p271
「「グッドラック!」ラッシュが叫ぶ声が聞こえた。」
p276
「では、あのシャチとか恐竜とかミサイルとか黒ヒョウとかは、たいした刺激ではなかったということだろうか。」
p279
「「もしかして、君は……。」僕は、トランスファの名前は言いかけた。声は以前と違っていたが、言葉の選び方、返答のタイミングに懐かしさを感じたからだ。」
p280
「すべてオーロラがプランを立て、トランスファが支援をしている。ロボットや機器類を麻痺させているのもトランスファだ。もし、彼女だとしたら、最強であることを、よく僕は知っている。」
p288
「ジョン・ラッシュからメッセージが届いたのだ。」
p291
「同様に、人類は人間の絶滅を、どうにか防いでいる。誇らしい正義がある、とやはり錯覚して……。」
p294
「フランスの自然史博物館で、キャサリン・クーパ博士と再会した。」
p296
「「なるほど、人間の感情というものが、絶滅するということですね。」」
p297
「「私は、思いません。滅びることが、本来の自然です。それが、いうなれば、神の意志でした。既に、そこから逸脱し、私たちは自由というものに傲り、溺れている。どこまでも自由になれるのだと勘違いしているように、私には見えます。」」
p299
「赤い目の少女だった。」
p299
「「ここは、君の世界なんだ。」」
p300
「「君の手を握るのは、初めてだ。」」
p300
「二人だけになった。永遠に生きられるよりも、明日がある方が、幸せかもしれない、と思う。完全な自由を手に入れるよりも、今日より少し自由な明日を信じて生きよう。」