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@nininice
2026年7月31日

日本人の暮らしのかたち
森本哲郎
読み終わった
日々の暮らしの実感とは、瞬間瞬間の感情の流れによって生まれるものだ。そして人生とは、そうした実感から紡ぎだされた「意識と気分」が織りなす一本の帯と言ってもいい。私たち現代の日本人は、この一本の帯に輝きを与える何か、毎日の暮らしのなかで、味わい深く、しみじみとした情感に浸される瞬間を失ってしまったのではあるまいか。
電子機器時代の前に使われていた調度品や家具などについての郷愁ただよう随筆集。美しい和歌や蕪村の俳句や蘆花の随筆からの引用も多く、現代日本の生活がなんと味気なく貧しいものかと悲しくなってしまうほど。〈冷たい火鉢、煤けた軒端、ゆるい下駄、山吹の井戸、破れた扇、焼野の地蔵、色褪せた蚊帳、蛇目の衣鉢、白露の家、霜夜の鐘〉これら目次を眺めているだけでもうっとりとする。
桐火桶無絃の琴の撫ごゝろ 蕪村
恋わたる鎌倉武士のあふぎ哉 蕪村
目にうれし恋君の扇真白なる 蕪村
紅梅や見ぬ恋つくる玉すだれ 芭蕉
蚊屋つりて翠微作らん家の内 蕪村
うつくしや障子の穴の天の川 一茶
灰汁桶の雫やみけりきりぎりす 凡兆
きつね火と人や見るらん小夜しぐれ 蕪村
しら露の身や葛の葉の裏借家 蕪村
萩にくれて玉田横野へわかれ行 蕪村
とりつなげ玉田横野のはなれ駒つゝじの岡にあせみ咲くなり 俊頼
釣鐘にとまりて眠る胡てふ哉 蕪村
すゞしさや鐘を離るゝ鐘の声 蕪村