Yo "ノート/夜、波のように" 2026年8月3日

Yo
Yo
@otsuki
2026年8月3日
ノート/夜、波のように
百と白を読みちがえて、日のいちばんたかい時間の明るいめまいのなかに置かれる。すこしぼやけたられしいずれのなかに。けれど頭上の一点、見あげるいちばんたかいところは不動のまま。日はま白く百とおりにもずれ、この白さ。目の愉悦。 p14 あの橋のところ。そう、あの橋の真ん中の少し先のほう。渡りきってしまう手前。なにがあるというわけではないけれど、不思議と周囲の景色が変わる。というより、私の内部が。遠い昔とすぐ先の時間を束ねて風を切る私の身体が発光し、ひとりでにもうひとつの空間と共振しようとする。 p28 しろのふ、と書いて、シロノフという国を想い、雪の荒野に果てしなく続く線路と白樺の林を想像するが、シロノフは人の、男の人の名であるかもしれない。しろのふ、と書いて今、眠れないこの夜に 綴る白の譜を始めようとする。雪、紙、羽、花、集、息、石、骨。 それぞれの固さと柔らかさが、夜の意識のただなかを浮遊しながら落下し、それぞれの位置をきめようとすると、白と白の放つ強烈な光りに私の譜はばらばらにほどける。シロノフの雪原を白い息を吐いて行く人がいる。p43 眠れずにいることの苦しみ。苦しみと呼ぶには大げさで、大まかにもすぎる。身体をよじって、シーツをよじって、暗い夜の端をよじって、いまわずかに掴んだ眠りの恩寵の気配がほんの瞬間に逃れてしまうと、生まれかけたささやかな世界が音もなく崩れて。寝返りを打つと、触れたことのなかった時間の領分の意外な広さ。やがて訪れるかもしれないやわらかい着地までのあいだ。眠れずにいることの苦しみ。眠れずにいることのよろこび。p54
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