
しがない
@ooe
2026年8月4日
読み終わった
村上龍が人気な理由がわかった気がする。
それは自己思想や哲学がないまたは自分の意見を持たない人が、村上龍の描く強い自我に魅入るからではないか。その憧憬は自我の暴力性を促すが、いざそれを矢面に出そうとするとたちまち億劫になってしまう。その行き場のない暴力性がまた村上龍を希求する。
そう自分が思ったのはキク(自我強)とハシ(自我弱)の対比により、改めて強調されて、「村上龍の作品は自我の強い人間が物語を展開している」と判ったからである。
この作品の感想としては、村上龍に見られる『いい加減さ』が無くて物足りなかった。というより村上龍にしては文章が丁寧過ぎた。あまり言語化はできていないが、対比によるキャラクターの描き方が丁寧すぎたのではないかとは思う。その解像度自体は高い、高いが、コインロッカーという閉鎖空間で生まれたキクが自我が強いのはどうなのだろうと思う。文章にも描かれているように「憎しみ」が彼の生きるエネルギーにはなっているのだろうが、それは自我の強さに繋がるかは自分としてはいささか懐疑的である。
世間的な評価はかなり高いだろうしおもしろいとも思うが、僕個人にとってはつまらなかった。それはWikipediaを眺めてるようなつまらなさだった。
最初に描いた通りだが、自我が弱い人達にとって、この作品はすこぶる刺激的で痛快で楽しめるのだと思う。
特に周りの評価が自己の存在になっている人々にとってはこの作品こそ暴力性を触発するダチュラである。
村上龍の作品を人に薦めるなら、『コインロッカーベイビーズ』こそ一番に胸を張って人に薦めることのできる作品だと思う。



