
RIYO BOOKS
@riyo_books
2023年2月11日

黄金虫変奏曲
リチャード・パワーズ,
森慎一郎,
若島正
読み終わった
つまるところ、『ゴルトベルク』が語っているのは変奏のパラドックス、保存される逸脱、段を重ねていく展開に内在する遷移効果、程度の変化に付随する質の変化にほかならない。いかにして偶然から必然が発生するか。いかにして同じものを増やすことから違いが発生するか。親失格のアリアがセットを閉じるべく戻ってくる頃には、その音楽は、変奏がしまいには自由になれるんじゃないかという、そんな物語になっている。自身を下支えし、また始動させた張本人ながら、経験の試運転から何が生じるかを予期している節はどこにもない、そんな指令からついに身をもぎ放す可能性の物語に。