タケチ カツエ
@katsue
2026年8月7日
指輪
森瑤子
この中の一章、一等待合室。
古本食堂新装開店に載っていた短編小説。
こういった夫婦の倦怠を書かせると、森瑤子の右に出る人はいない。林真理子の「不機嫌な果実」もこの小説の前では陳腐なコメディに見えてくる。
今の夫婦ならSNSで相手の悪口を口汚く罵るか、自分は可哀想な被害者と、書き連ねるか発言するか…。
おそろしいくらいの無関心や裏切りも、宝石のような輝きや憧れさえ漂わせる。
情事の誘いをかけてきた男が、すんでのところで未遂になる結末に、残念な表情に本の一点のシミのような安堵感を見せる所、それを見逃さない女の観察眼。短編ながら緊張感が漂う作品だ。
