
よる
@tokitamayahho-
2026年8月8日
さよならバグ・チルドレン
山田航
読み終わった
角砂糖ふくめば涼しさらさらと夏の崩れてゆく喫茶店
夏はゆく何度でもゆくだから僕は捕まへたくて虫籠を置く
好奇心だけで小さな帆をたててぼくらは白い船に揺られる
歩き出さなくてはならぬかなしみを犬をからかつてごまかしてるね
溜め息を我慢してゐる人たちで溢れて街は呼吸困難
祈りではないんだらうな目を閉ぢて午後のベンチに凭れることも
心地よい眠気を愛と間違へて唾をシーツに滲ませてゐた
さみしいときみは言はない誰のことも揺れるあざみとしかみてゐない
鉄道で自殺するにも改札を通る切符の代金は要る
たましひがぴちやぴちや音を立ててゐてカフェラテの味がわからないんだ
許すとかいふ傲慢な感情を掻き混ぜて洗濯機がまはる
正月しか見たことのない漫才師みたいに生きてゆけたらと思ふ
いつも遺書みたいな喋り方をする友人が遺書を残さず死んだ
僕の背に軽く刺さつてゐる爪が三日月よりもとほい気がする
夢の中で見てゐたやうな日の暮れを君と歩いてゆけるかなしみ
いつだつてこころと言葉を結ぶのが下手だねどうしても固結び
ざわめきとして届けわがひとりごと無数の声の渦に紛れよ
あやまちに触れてはしやいだ夏の日をたぶん僕らは繰り返さない
ぼくたちは尾びれをリボンでつながれたランブルフィッシュひどくさみしい
自閉とはむしろ自開だ秒ごとに傷つく胸を風に晒して
地下鉄の風に激しく煽られて風鈴はりりぢぢぢぢり鳴る
冷蔵庫それは内側だけをただ照らし続けて立つ発光体
いつの日か誰かわかつてくれるだらう 夕焼けもまた自閉してゆく
アヌビアス・ナナ水槽に揺れてゐて ナナ、ナナ、きみの残像がある
ポケットに未訳詩集を入れたまま歩かう公園通りの朝を
虫のやうな暮らしとおもふアパートの一室灯し身を寄せあへば
笑ふより泣くより怒るより前を見つめ続けるといふ感情
島根県立図書館にて