
にゅっくり朝丸ロケット
@ntr_
2026年8月8日

私本・源氏物語 (文春文庫)
田辺聖子
かつて読んだ
蔵書
やあ、ボク様だよ。
千年の昔より熱狂的な支持を恣にする最古の長篇小説、「源氏物語」
いつの時代にあっても出会いがないとかそういうこと以前に自分自身の内面に問題があって理想通りの恋愛をエンジョイすることが出来ぬ轗軻不遇の身の上にブチギレてるお前らみたいなやつの心に深く刺さり一生抜けない棘となる。
読む前は美形でめっちゃモテて実家も太くて無敵のファンタジー主人公だと思ってた光源氏が「美形有能モテモテ主人公なのに…そういうとこやぞ」に落ち着くあの快感よ。
多くの文豪にとっては「このすげえやつをこの手で現代語訳してえ……翻訳とは究極の熟読だって村上春樹も言ってる」と思うものらしく、桃尻訳、唐源氏、与謝野源氏、そして究極である谷崎源氏……とこちらも多くの現代語訳が出ているのはご周知の通り。
そんな中でも与謝野源氏の流れを汲む女流作家ならではの繊細な表現と現代的な口語体にこだわり没入感を重視する見事な翻訳が楽しめるのが田辺聖子訳、それをここでご紹介しようというわけです。
……ごめん、田辺源氏は田辺源氏でもこの「私本・源氏物語」は翻訳作業中に透けて見えてくる読者に愛されてる方の光源氏が主役、話すのは基本関西弁。しかも幕間に飯を食う。
この光源氏に読者に代わって「そういうとこやぞ」「どのツラさげて言うてはりまんの」と突っ込んでくれるのは著者のオリジナルキャラであるヒゲの伴男。
光源氏の立場・身分を考えると必ずいなければならない存在として藤原惟光とは別に彼を配置することでこの作品は平安時代の貴族社会の風俗にリアリティを持っている……というのが田辺聖子の上手いところですね。
で、リアリティと言えばですよ。
源氏物語のヒロインには当て馬が存在せず、すべての女君が非常に魅力的っていうのはまあ1,000年前から言われてるから今更なんだけどさ。
一人だけ魅力的なだけじゃなく妙に生々しいコが混じってるよね、という話。
彼女は育ちが良く、それに恥じぬ上流の人物であり、慎み深い……のに恋に沼ってヤンデレ化する。
しっかりした子がヤンデレ化して見る影もなくなった姿からしか得られない栄養があるってしみじみしてた所へ「あんたの癖は完全に把握しとうからな」と急に理知的な年上に戻って釘を刺してくる(「賢木」)あのタマヒュンする瞬間。
六条御息所だけまんまのモデルがいるんじゃないかってくらいのリアリティはなんなの?
紫式部はどんな人生歩んでたらその身分でそんな生々しい色恋の瞬間を取材できるの?