
霧
@yoruto
2026年8月9日
英雄の書(上)
宮部みゆき
読み終わった
借りてきた
あらすじ
森崎友理子は小学五年生。ある日、中学生の兄・大樹が同級生を殺傷し、失踪するという事件が起きた。兄の身を心配する妹は、彼の部屋で不思議な声を聞く。「君のお兄さんは、“英雄”に憑かれてしまった」。大叔父の別荘から兄が持ち出した赤い本が囁いた。『エルムの書』に触れ、最後の器になってしまった、と。友理子は兄を救い出すべく、英雄が封印されていた“無名の地”へと旅立った。
本文p333より、抜粋。
お母さんは瞼を伏せた。「大樹が、お友達にひどいことをしたって思わない?」
ユーリは飲みかけのバナナジュースを見つめた。「お兄ちゃんがどうしてあんなことをしたのか理由がわかんないから、思わない。お兄ちゃんは、フツーの喧嘩だって、滅多にしなかったよ。でしょ?」
お母さんは黙ってうなずいた。
「そのお兄ちゃんがあんな事件を起こしちゃったのは、よくよく思うところがあって、ほかにはどうしようもなかったからだよ。もちろん、ナイフなんか持ち出す前に、お父さんお母さんや先生に相談するとか、ほかにいろいろな方法はあったと思う。いつものお兄ちゃんなら、それがわかったはずだよ。けど今度のことでは、いつものお兄ちゃんではいられないくらい、よくよくの理由があったんじゃないかな。その事情がわからないと、あたしにはお兄ちゃんが悪いって言えない。やったことはいけないことだけど、あたしはまずお兄ちゃんの言い分を聞いてあげたい。家族だもん、そうしてもいいと思う」
