糸太
@itota-tboyt5
2026年8月11日

アムンセンとスコット
本多勝一
読み終わった
人類初の南極点到達という偉業に挑む、二つのチームの物語。リーダーの資質やチームづくりが対象的で、さらには結果もはっきりと明暗が分かれたことから、いま振り返っても学ぶべき点は非常に多い。
とくにアムンセンのプロジェクトの進め方には瞠目しどおしである。ソリを引いてくれる大切な犬を、食糧としても計算しつくす用意の周到さ。ゲームの要素を取り入れてチームの士気を高めるマネージメント力などはさすがである。
一方のスコット隊については、うまくいかなかった事例が数多く示される。でもそれは結果を知ってからの指摘のようにも思えて、すこし切なくも感じてしまう。
たとえば極点隊にエバンズを残したこと。また パワーズを加えたことは、本当にその時点で悪い結果に必ず至ると予測し得た選択肢だったのだろうか。「もしも」ということを言い始めたらキリがないが、天候がすこしでも変わっていたら、マイナス要因が逆にプラスへと働いた可能性は、もちろんあったに違いない。
むしろ、より学びがあると感じたのは、スコット隊の悲劇が伝えられた後の、アムンセンに対するイギリス国民の態度である。
偉業を讃えようとする姿勢は見られない。自国民の悲劇を受け止めきれずに、そのやり場のない感情を成功者への怒りに変えてしまった。おそらく無自覚に。そして、公平さを欠いた評価だけが残されることになった。
人間は感情で動く。でも、その場に身を置いていると、なかなか気がつけない。賢明な人ほど、自分は冷静だと勘違いしてしまいそうな気もする。たとえばスコットは自身の情緒的な判断にどれほど自覚的であっただろう。正しいか正しくないかは別にして。
俯瞰的な視点が大切なのは言うまでもない。感情との距離をうまくコントロールするためには、こうした歴史的なドキュメントと何度も向き合うしかないのかもしれない。

