しがない "Voix" 2026年8月10日

しがない
しがない
@ooe
2026年8月10日
Voix
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吉増剛造
圧巻。吉増剛造は天才だ。 詩の域を出てもはや芸術に等しい。それは装丁や本の作りからも雰囲気が出ている。 彼の思想の根底にアニミズムを感じるのだが、それが震災の傷跡が残る石巻を通して壮観に出ている。 例えば「巨魚ノ」のルビが「i,sa,,na」となっており、イサナは『クジラ』の古代語である。これは所詮ちっぽけな我々をあまりにも大きく、それも自然の権化であるクジラと比すると共に「イサナ」と読んでいた自然へそして古代へと連れ戻す試みなのだと思う。また句点の使い方が独特で「i,sa,,na」とすることにより一語ごとの音が読むにつれてより強く強調されていく。それに「素晴らしい」や「すごい」などという言葉を使うのではなく「oh!mademoiselle kinka!」という言葉を用いることで、『凄い』という感情をより実感的に感じることができる。加えて『金華山』という宮城の山の意味も込められている。それでいて一つの詩として読んで、全く不自然じゃないというのが凄い。その技巧は気を衒ったと言える次元ではなく極めて緻密である。 また詩の中に「ヒヨリ 日和」という記載があるのだが、自分たちは自然と『ひより びより』という音で読んでしまう。つまり自分たちは「ヒヨリ」と「日和」を違うものとして捉えている。著者の意図はわからないが、そういうレトリックによって我々の構造的な見方に問いかけてる。記号の本質をこの古代の呼び戻しにおいて揺るがされる。 この一冊はかなり素晴らしい作品で、詩の枠組みに囚われない、自分が読んだものの中で過去最高の部類に入ると思う。
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