
ピエ
@pie_202
2026年8月10日
プラネット・ダイアリー
マリー=ヘレン・ベルティーノ,
小澤身和子
読み終わった
装画が素敵なのと、あらすじを読んで気になったので手に取った。
フィラデルフィアに人間として生まれた宇宙人のアディーナの物語。幼い頃に自分は宇宙人だと知らされた彼女の使命は、ファックスで日々の出来事を母星の「上官たち」に書き送り、地球に関する知見を集めること。毎日送り続ける報告には、上官たちの短い返答が同じくファックスで返ってくる。
本屋ではSFコーナーに置いてあったが、あまり「SFっぽい」小説ではない。未知の技術は上官たちとやり取りするファックスのみで、アディーナの生活は他の人々とさほど変わりない。
しかし、彼女は宇宙人であること以外にも、周縁化されがちな特徴を持って生きており(イタリア系アメリカ人であること、アセクシュアルであることなど)、それが時に彼女に疎外感を与えているように見える。
原題の"Beautyland"は、アディーナが育った家の近所にある化粧品専門店の名前だ。シングルマザーの母は金銭的な余裕が無く、カウンター奥に並ぶブランドものには手を出せずに生活必需品のみを買っていた。
大人になったアディーナが再訪した時、会計時の雑談で店員が言う。この辺りの店名は「みんながよく知っている場所っぽく」名前が付けられている、それは「なんか安心する」からではないか、と。だが、子供の頃のアディーナと母にとっては、香水のテスターを次々試すという束の間の楽しみがありつつ、それをあけすけに非難する嫌味な店員のいる、少し気後れのする場所だった。
アディーナや社会の中で異質とされる「エイリアン」たちにとって、地球や国もまた"Beautyland"なのかもしれない。マジョリティにとっては所属感のあり安心する場所でも、そうでない人にとっては時に気まずい思いをさせられたり排除されたりする場所になり得る。それでもそこには愛する人々もいるし楽しいことだってあり、何よりそこ以外にもっと良い居場所があるわけでもないのだ。


