ワタナベサトシ "誓願" 2025年4月1日

誓願
誓願
マーガレット・アトウッド,
鴻巣友季子
100分de名著の前に読まなきゃ (4/18〜22 読了) 『侍女の物語』から30年以上を経て書かれた続編。作中の時間で15年が経過しているとされている。 作劇(叙述)における前作との大きな違いは、語り手が侍女ひとりだったのが、3人が代わる代わるそれぞれの視点で語る記述法になったこと。これにより、『侍女の物語』にあった独り語りによる陰鬱さや不明瞭さ、奥歯に物が挟まったようなもどかしさが消え、ストーリーに起伏が生じ、読み進めながら引き込まれていくような感覚があった。有り体にいうと『侍女の物語』よりもずっと面白かった。 80年代に書かれた小説と2010年代末に書かれたものでは、喚起しようとする主題が異なってくるのは当然であり、前作で救いのないディストピア世界の閉塞感をたっぷり味わされてどんよりした読後感のまま30年放置されたとするなら、『誓願』は正史として“救い”を供給する意図が強くあったのだろう。 社会派な問題提起を全身で受け止めて眉間に皺を寄せながら渋い顔でこの2作を解釈するのもありだと思うが、エンタメ小説として世界観や展開を存分に楽しむのも正しい姿勢だと思う。面白かったという感想にためらいはない。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved