@sotaono
2026年8月13日
「美しさが見たいのなら。
生きていることを感じたいのなら。
その死以外に、美しい死はない。
革命の夜に涙を流し、
血の味を知る者だけが叫ぶ。
待っていろ、今にこの手に
貴様の首を摑んで見せると。
偽りで作られたものを
破壊し、耕し、
そして、幻の種を撒け。
なにも生まれない。
そう、なにもかも、
すべては幻想。
戦う者だけが、
少なくとも人間の幻想に
触れることができる。
それ以外のすべては、
大人という名の生きものが
腐った泥で作り上げた偶像だ。
お前は泥か?
確かめたいなら、戦え。
自分が何者か知りたいのなら、死ぬまで戦え。
ひび割れて、朽ちるまえに。」
p25
「ただ、言葉というのは、いつもこんなふうに、綺麗に飾って現れるものなんだ。」
p27
「いつまでもこれが続くことなんてありえない。それはわかっている。お互いにわかっているはずだ。だからこそ、繰り返すことができる今を、もっと喜べってことだろうか。」
p38
「「ボンネットに猫のマークがあった。」」
p40
「「どういうわけか、みんな、俺に話したがる。俺が聞きたがらないせいだろうな。」」
p85
「「人間はね、戻れないの。誰一人、戻ることはできないわ。大人が子供になれる?」」
p87
「「もう、あなたが懸けたクサナギ・スイトは、消耗しました。見切りをつけるときが来たのだと思います。」」
p93
「「クサナギさんの、幼馴染みだったって、知っていましたか?」」
p96
「心配だなんて、引出の奥に仕舞ってあったみたいな上品な言葉を持ち出してきたけれど、心配している姿を、草薙に見てほしいのだ、きっと。結局、大人って奴は、自分が好かれたい、という動機しか持っていない。だから、自分を好きになってくれる可能性のあるものにしかアプローチしない。そういうふうにできているのか、あるいは、そういう気持ちしか、働かなくなってしまったのか、ようするに、ほかのいろいろな感覚が錆びついてしまった、ということだろう。」
p96
「虫を触ったら面白いとか、草の根っこを引っこ抜くとすっとするとか、高いところから飛び降りたら気持ちが良いとか、そういった感覚を、すべて自分には無駄なものだと処理してしまった。その結果できたものが、つまり大人だ。そういうものを、大人しい、というのだろう、たぶん。では、自分にとって無駄でないものとは何か。それは、自分に利益をもたらす対象だけ。自分を好いてくれて、自分に快楽を与えてくれるもののみ。それだけが生きる目的になる。それが、女だったり、金だったり、それとも名誉だったり。ああ、なんてつまらない。さらに輪をかけてつまらないのは、女といっても、つまりは外側の形だけのことなんだ。金も名誉も、つまりは自分が思いどおりに他人を動かせるというだけの上辺だけの効果なのだ。」
p113
「「あなた方にとって、命とは何ですか?」」
p132
「「嘘だよね。だって、本当に生まれ変わるんだったら、どうして、こんなに死ぬのが怖いと感じるの?」「そんなに怖い?」「怖いよう。」「忘れるからじゃないかな。」」
p137
「「だけど、嬉しいことで、悲しいことって、消せないんだよね。」」
p145
「「サガラさん。」僕は彼女の名前を思い出した。」「嬉しい。名前を覚えていてくれたのね。」彼女の口が微笑んだ。」
p152
「「嘘だ。」草薙がふっと吹き出す。「慌てている。何年のつき合いだと思う?」」
p157
「じっと僕を見つめている彼女の瞳。西の窓の磨りガラスを、赤い日差しが照らしていて、それが小さくなって、彼女の瞳の中にもあった。この人は綺麗だな、と僕は思った。」
p158
「「私はね……、キルドレを普通の人間に戻す方法を発見したの。」彼女は言った。「長い間、これは不可逆的なものだといわれていた。でも、方法があった。動物実験では既にパーフェクトに成功している。安全な方法です。」」
p160
「「いいえ、違うわ。」彼女は優しい微笑みを見せた。今日初めての、本当に愛情に満ちた、そんな余裕さえ窺える顔だった。「名声なんて、私には興味がありません。」」
p161
「「でも、覚悟はしているの。大丈夫。あなただって、飛行機に乗るときは、覚悟をしているでしょう?科学者だって同じです。新しいものに挑むときは、空を飛んでいるのと同じなの。地上の生活からは、遠く離れている。そして、そのままもう戻れないことだってあるってこと……。」」
p162
「「もう、あの頃には、研究はほぼ完成していた。偶然だけれど、私はクサナギ・スイトと同郷だった。これが、私の研究の最大のキーだったの。」」
p177
「草薙は僕を見据えている。じっと視線を逸らさない。獲物を狙う猫科の獣のようだった。僕は、最初は自分のついた嘘を責められている、と感じた。しかし、そうではない。僕はようやく気づいた。草薙の目は、僕に嘘を押し通せ、と命じているのだ。」
p183
「しかし、一人の人間が二つの人生を比較することは無理なのだ。短くても、長くても、一瞬でも、永遠でも、人生は一度きり。これだけは誰にも共通している。「いいえ。」」
p189
「本を読んだりして、普通の人間の思考を知ることはできるけれど、どこまで現実に存在するものなのか、やっぱりわからない。愛情と呼ばれるものの多くは、単に、自分が良い思いをしたい、自分が望んでいる状況になりたい、という欲求に過ぎない。相手を愛していると口では言いながら、つまりは自分のことが大事なのだ。」
p190
「愛情を信じて恋人を愛撫する者も、勝利を信じて戦う者も、同じだ。」
p199
「僕な彼女を追い。僕は彼女を守り。僕は彼女を見て。僕は彼女を待った。触れたことはない。一度も。」
p200
「美しいものを知っている。愛するものを知っている。触らなくてもわかる。抱き締めなくてもわかる。愛されなくてもわかる。子供は、母親を知っている。それと同じことなのだ。」
p206
「人間の人生なんて、このトンネルみたいなものかもしれない。トンネルに入ったときが生まれたとき、トンネルから出るのが死ぬときだ。どこへもいけない。ただ、出口へ向かって進むしかない。長くても、短くても。」
p206
「人は他人に対してなにもできない。どんなに優しい言葉をかけても、愛撫して抱き締めても、なにも救われない。他人の命に関わることはできないのだ。唯一の例外は、その人間を殺すことだろう。」
p208
「「ティーチャは、どうしているんでしょうか?」」
p212
「「私は、クサナギ・ミズキ。」」
p241
「「どうか、お元気で。」」
p247
「二度と草薙水素と会うことはないだろう、というあのときの予感は当たっていた。」
p249
「たぶん、今の僕は、そうやって自分を説得しているのだろう。これが人間だ、これが人間だ。「しかたがないよね、人間なんだから。」」
p274
「花束で、どんな自由が得られるだろう。」
p275
「僕が僕であり続けたい。生きているかぎり。」
p296
「猫の目?猫の顔だ。」
p332
「そうだ、花束を買っていこう。」