
amy
@note_1581
2026年8月14日
読み終わった
感想
ASD
本書は、「自閉スペクトラム症の当事者はマンガ、小説、アニメ、映画、テレビドラマ、音楽などから“人の心”を理解しようとしているのではないか?」という仮説をもとに、コミュニケーションが苦手で共感能力が乏しいとされてきた、自閉スペクトラム症者7名へのインタビューをまとめた内容となっている。
仮説をもとに、さまざまな生い立ちを抱える当事者7人に、自身も当事者である著者が共感を込めてインタビュー。かれらが夢中になったマンガ、小説、アニメ、映画、テレビドラマ、ポップミュージックは、どのようなものだったのか。「当事者の生活史」と「昭和・平成・令和のサブカル変遷史」が見える一冊だ。
個人の生活史、なかでもカルチャー面をつまびらかにすることは、そのなかでなにに夢中になったか、またハマらなかったものはどんなものかを聞くことであり、それはつまりなにに心を打たれ、何が心に響かなかったかを読者に知らせる作業である。
インタビュイーの人たちは私よりも世代が上の人たちが多く、名前だけ知っている作品が多かったけれど、何がその人にとって魅力的だったのか、という点については自分も好きな作品に出会ったときと同じような思いを抱いたことも多かった。
この本のによかったところはインタビュイーを投げっぱなしにしないところである。
著者の横道氏も ASD かつ ADHD の当事者である。インタビューのなかで受け取った内容をマコト A とマコト B という2人を用意して、対話形式で横道氏自身にも通じること、通じないことを踏まえて深掘りしていくという、いわば交通整理をしながらも、スペクトラムという言葉が表すように人によっていろいろあるのだと知らせてくれる。
あなたはあなた、私は私、こういうすっきりとした割り切りというか他者と自分をセパレートにするという考えにするりと着地をしていく。
それが私にはとても心地よかった。
インタビューのなかで当事者たちがいかにいろいろなことを思い、考え、人の心を理解しようと実践しているかを見れば、ASD に「人の心がない」なんてとてもじゃないが言えないだろう。だからこそ横道氏は「心のない人」という一見ぎょっとするような言葉をタイトルに持ってきたのではないだろうか。
本書のなかでマコト A が言っていた「数が多いか少ないかで、正常か異常かが決まってくるからね。そのことはもっと議論されても良いよね。」という言葉がすべてで、結局、いまこの社会のなかで多いか少ないかで異常ではないと判断されている。
単なる数の多寡で異常だとか正常だとか何様かと思う。裏を返せば、いま異常である側の数が多い社会(正確にはそれがよしとされる社会)では、いま正常の側にいる人たちが異常になっていくということでもある。
時代や社会や産業構造によってころころと変わる尺度で、異常だとか正常だとかで他人を測ること自体があまり意味のないようなことだと思えてくる。


