

amy
@note_1581
悲しみなら忘れられるけど 愛はなかなか消えやしないよ
2025.03.05〜
- 2026年5月24日
男はクズと言ったら性差別になるのかアリアン・シャフヴィシ,井上廣美フェミニズム読み終わった感想人種差別前々から気になってはいたんだが、フォロワーさんが読んでいるのを見てついに手に取った。 タイトルはかなりインパクトがある。「男はクズ」という言葉は数年前にSNSで大きな反響を呼んだ。インフルエンサーの女性がセクハラ批判でSNSに書き込んだ。 当然ながらこの投稿には男性(おもにミソジニーを持つ)たちからヘイトスピーチだと批判された。 しかしそれはヘイトスピーチなのか。社会の権力勾配や男性優位社会の状況をふまえながらヘイトスピーチたりえないと訴える。 ”男らしくない”というフィードバックを受けた男性は戦争や男性の優位性やホモフォビアに対する支持が強くなった、という実験結果の話で別の書籍の『マチズモの人類史』では産業革命により男らしさを維持できない環境になってきているという話があったことを思い出した。いま色んな国で、若い男性層の一部には、急激なジェンダー平等の推進によって「自分たちの機会が奪われている(逆差別)」と感じる層が生まれ、「保守・右派(あるいはポピュリズム)」への支持が広がる傾向がみられる、ということとつながるのではないかと思った。男らしさを維持することが難しくなってきている、自分は男らしくあることができない。そういう意識と男性性優位な社会への支持が接続してしまうのではないのかと考えた。 また驚いたことはアフリカ系への人種差別でサッカーのスタジアムではサポーターからの人種差別的なコールなどがなくなったから、という理由でコロナ禍でのアフリカ系の選手のパフォーマンスが向上したというところだった。そこまでひどいのか、と愕然とした。なんというかひいきのチームを応援するにあたって、人種差別を野次に使うのは全然サッカー関係ないじゃんとか思ってしまったんだが。そういうことも通じないということだろう。 この本には性差別のほかにも人種差別、ポリティカル・コレクトネス、犬笛が飛び交うことの問題、ブラック・ライヴズ・マターに対するオール・ライヴズ・マター、マンスプレイニング、キャンセルカルチャー、構造の不正義、それらに私たちはどう立ち向かっていくべきかを述べている。 最終的には人種差別的な資本主義を崩していかねばこの世界を席巻する問題は解決しないだろうという結論だったが、それらを解体するには途方もなく、またその途方もなさをどう抱え、どう生きていくかというところまで述べているのがよかった - 2026年5月24日
ざんどぅまの影(5)澤村伊智ミックスルーツ読み終わった感想排外主義沖縄障害者澤村伊智の!新刊!読みました!おもしろかった……。ちょと今のところ今年のベスト3に入りそうだ。いまのこの時勢で、社会をこれだけ取り込みつつ、小説でしかできない表現をしており、そしてホラーとしてしっかり怖いのすごすぎないか、小説うますぎ。 今回は障害者、ミックスルーツ、沖縄への差別と米軍や先の大戦による天皇批判要素もあり、めちゃめちゃ盛り込んでくるやん……と思いながら読んでいたし、最後のあの小説だからこそできる演出、自分の偏見が浮き彫りになり、食らった。本当にまだまだ自分のなかにある偏見を引き剥がすのは難しい。今回体感でもって自分のなかに内在化した偏見の存在がわかってよかったと思う。 また排外主義に陥る人間の心理、それが成立する環境がどうできあがっていくのかも緻密に書かれていて、それに伴う差別や偏見による加害もかなり含まれるので、読む人はその点に気をつけてほしい。 ホラーというジャンル柄、このへんのラインがしっかりしている作家さんは大変貴重だ。貴重というのも悲しい話ではあるけれど。 比嘉勝子さんがかっこよすぎて、私はちゃんと澤村伊智作品を誠実に映像化してほしいんですよ。誰かもっかいやってくれないか… - 2026年5月17日
のっけから失礼します三浦しをん読み終わった感想おもしろいと聞いていた三浦しをんのエッセイ。書き口?がめちゃめちゃオタクのそれでウケてしまう。コテコテのオタクしゃべりとでも言えばいいのだろうか。セルフツッコミの嵐であった。 文章や日常へのまなざしはすごくおもしろいのだけど、ちょこちょこと自虐が過ぎるんでは…そんな、そこまで言わんでもと思うような表現などもあって、でも女オタクってわりと自虐や自己卑下が標準搭載な感じもあるよなあと思う。なんでそこまで自分を下げなきゃならないんだろうか。自虐って相当上手にやらないと他の人のことも踏むよなあ。後半はほぼハイローか宝塚の話をしておらず、オタクが何かにハマったときの熱量がありありと伝わってきた - 2026年5月17日
獅子座、A型、丙午。鈴木保奈美フェミニズム読み終わった感想「あの本、読みました?」の司会をされている鈴木保奈美さんのエッセイ本。 番組きっかけにInstagramまでフォローしてしまった。最近ではNHK BSで放送していたドラマ「対決」がすごくよかった。 中身自体は連載をまとめたエッセイなのだけど、ナチュラルにフェミニズムの思想が出てきたり、母親というものへの屈託が出てきて芸能人のエッセイだとめずらしいなと思いつつ読んだ。私のイメージとしては鈴木保奈美さんといえばトレンディドラマで大人気の俳優さんのイメージがあったので、そういった人でもこういう関心があることはとても心強い。小泉今日子さんにも通じることだけれど。 - 2026年5月6日
或る集落の●矢樹純読み終わった感想連作短編集。久しぶりに読んだホラーもの。けっこう人間の持つ禍々しさと人ではないものの存在の不気味さが文章からずっと漂ってきて、世界観への没入感があって、ひー!と思いながらもするするっと読んだ。連作短編集なので、話がじわっとつながっていて共通する人物が別の話にも出てきて、それが活かされた展開でさらに強さを増す構成になっていた - 2026年5月5日
日記の練習くどうれいん読み終わった感想日記が苦手なので引き続き日記に関する本を読む。くどうれいんさんの『日記の練習』は一ヶ月に1日ごとの日記を書いて、その月の終わりに長めのエッセイをひとつ書くという形式で進んでいく。書いていない日もあり、その書いていない日も数日続く期間が存在しており、日記を続けることの定義がだいぶやわらかくなった。いろんなことが描かれているけど、やはり私は日記やエッセイはその人の思考ジャグリングが見たいので友人やパートナーと何したということにはとんと興味がなくて困る - 2026年5月5日
- 2026年5月5日
木洩れ日に泳ぐ魚恩田陸読み終わった感想図書館で返却したばかりの棚から借りてきた。二人の男女が部屋で夜から朝までずっと話をしているだけの小説なのだけれど、それでも確実に話が展開していくし、その展開に目が離せなくなって全然ダレないし、人物の物理的な移動がここまでなくてこんなにおもしろくなるのすごいな……。恩田陸は何を書いてもおもしろいな…… - 2026年5月1日
- 2026年5月1日
新訳 動物農場ジョージ・オーウェル,田内志文読み終わった感想2026年4月現在に読むジョージ・オーウェルの『動物農場』こわすぎ なんで今のことが書いてあるんだよ~~~…とめしょめしょしながら読んでいた。もう有名作品すぎるけれども、本編はもちろんだけれど、巻末に収録されていたオーウェルの序文がかなりよかった 当時の社会情勢(ソヴィエトなど)のことを批判しているが、2026年現在にもバチバチにハマっている。 正義や平等に関心を持たない動物たちがなんの抵抗もしないまま従順を受け入れることで、指導者が暴走してそのコミュニティごと破滅へ向かっていく。リアルタイムで起こっていることすぎて、読んでいてみぞおちあたりが重くなった。 - 2026年4月30日
読み終わった感想私は日記を書くことが非常に苦手だという認識があり、それをどうにかしたいと思って話題になっていたphaさんの新書を読んだ。 内容はかなり肩の力、というか気が抜けるような内容で(とても褒めている)、私みたいに頭でっかちで堅いタイプの人間には必要な角度だなーと思うなどした。 書くことがないと考えてしまう人へ向けて自分の外側に書くことを見つけるという旨を書いており、私は本当に思考が内側に潜りがちで脳内で思考ジャグリングをすることがクセになってしまっているので、そうか意識的に外へ目を向けなければなと納得した。 また日記を書くときに日記未満のメモを残しておく、SNSの言葉などを見返して日記を書いているというのを見て、目から鱗だった。 私は短文系SNSが大好きな人間なので、これならいっぱい残している。だからSNSの言葉を見返す、意識を外へ向けるの合せ技で少し日記を続けてみようと思う。日記とは何かを書き連ねたあとにAIは日記が書けないという結論に至っているのはかなり心強かった。 - 2026年4月30日
わたしの名店三浦しをん,西加奈子読み終わった感想テーマごとにお気に入りの店ととっておきの一皿、それにまつわるエピソードがまとめられた1冊。 大好きな作家の澤村伊智が寄稿しているというので読んだ。澤村伊智、なかなかエッセイなどは書かないので……。 タイトルの通り、書き手がこよなく愛する料理のことを書いているのと、そうに至ったエピソードがあり、読んでいて楽しかったし料理の描写がおいしそう。お腹すく。 前後で読んでいた本がわりと重めだったからいい息抜きになった - 2026年4月21日
従順さのどこがいけないのか将基面貴巳読み終わった感想従順であることはとても怖い。従順であることとはすなわち「あなたの好みになりたい」ということであり、それは精神的奴隷である。 波風を立てないこと、異議申し立てをしないことを良しとされる組織やコミュニティにおいて従順であることは大変に美徳なことではあるが、はたしてそれは本当に良いことなのか。 著者が人がなぜ服従してしまうのか、日本人に根付く間違った忠誠、決定されたことに対して「仕方がない」と納得すること、では私たちは「何に」従うべきなのか、どうすれば従わないでいられるか、不服従の覚悟とは 並べ立てるとぎょっとしてしまう内容に思えるが、その中身はいかに自分が自分であることを守るか、それが自分たちの生活や生き方を守ることになるかを丁寧に、明快な言葉で解説してくれている あとがきにも記されていたが、若い世代に向けて政治のことを伝えるつもりで書いたとのことだった。文章の平易さとは裏腹に中身が大変に濃く、また暴政の定義がまさに現在の日本の状況そのまんまでうなだれそうになってしまった 従うなら権威にではなく、自分のなかの良心や倫理や道徳に従いたい - 2026年4月15日
花檻の園北沢陶読み終わった感想北沢さんの新刊(と言ってもちょい前だけども)おもしろかった~ 耽美な世界観とミステリー調のホラーは大好きなので、嫌いなはずではなかった。主人公が大変オムファタル的な存在として描かれているのだが、てらいない描写で大変好みであった 「をんごく」と共通するバディもの、しかも片割れが怪異に飲み込まれて様子がおかしくなっちゃうやつ。こんなのもう大好きに決まっているんだから。一番おいしい部分なんだから。 もうこれにどう立ち向かえばいいんだよ…の絶望からのそういう方向!?への展開がわくわくしててよかった 時代物×耽美×ホラーに隠されたヤングケアラーとか加害が横たわっていた。花をちぎられるシーンは性加害のメタファーっぽい気がするんですけどどうなんだろう 北沢さんの作品、本になっているものは基本すべて目を通しているがいまのところどれも好きなおもしろさなので今後も楽しみ - 2026年4月14日
明治のナイチンゲール 大関和物語田中ひかるフェミニズム読み終わった感想現在放送されている『風、薫る』の原案。 読んでみて時代がゆえのつらさもあれば、このころから現代まで悪い意味であまり変化が感じられないところもあり、二重の意味でつらかった。 医師(当然ながらこの頃は男性)に看護師としての意見を下に見られたり、そもそも看護師という職業はそもそも「カネのために汚い仕事も厭わず、命まで差し出す賤業」とまで言われ、明確な職業差別を受ける職業であったことを知り、医者はそうではないのに、看護師の担う役割が治療ではなく看病やケアというかたちとしてわかりづらいものだったことは無関係ではないだろうなと思う またこの当時、ちょうど廃娼運動の時期だったこともあり、こういうときから性産業へ従事する人たち、当時は特に女性への眼差しも制度もとても冷たかったし、これはいまもだなあと思う 当時の廃娼運動はもともと娼妓として働く人たちの生活の保障が何もされていないこと、その世界から抜けたくても抜けられるような手立てがなく、また抜けたとしても生活のすべがないから、また戻ってしまうことなどを防ぐためであったが、同時に廃娼運動をしている人のなかにも淫婦呼ばわりするなど差別的な意識を抱えた人がいることがわかる。 ドラマはそのまま原案をドラマ化しているわけではないため、登場人物の要素を組み合わせていたり、本の内容通りではないこともあるけれど、これからの展開が楽しみなので最後まで見たい - 2026年4月12日
一冊でわかるイラン史関眞興読み終わった感想河出書房新社さんはいつもこういう本が読みたいなあ…出てた!となる本を生み出している イランのところ世界史のなかでも複雑で苦手なところだったんだが、やはり難しかった とはいえ単語などは聞き覚えがあるものだったので、高校のころよりは流れが理解しやすかった 現代史のところでイラン、イスラエル、アメリカとイラン周辺国との関係が説明されており、また2024年に刊行されたためトランプが核問題の包括合意から離脱したことで経済制裁を受けることになったとか、イランの国内の状況だとかが平易な言葉で解説されていて現代史の部分だけでも昨今の世界情勢への把握につながると思う ところどころにこの頃は日本では何が起こっていたかと日本史と照らし合わせることができるのも、時代の流れが把握しやすくてよかった - 2026年4月12日
戦争と罪責野田正彰読み終わった感想戦争反対戦争戦争関連きつかった。とってもきつかった。 精神病理学者である著者が、将校・軍医・憲兵など当時さまざまな立場で従軍した当事者たちへの聞き取りをもとに、彼らが罪の意識をほとんど「持っていない」という愕然とする事実を解明していく。 聞き取りの対象と内容 主な聞き取り対象は、遼寧省撫順市にあった中華人民共和国の撫順戦犯管理所に収容された戦犯認定された人々である。 個人としての告白を読んでいるのだが、中国を侵略したときの虐殺、拷問、生体実験の描写があまりにも凄惨で何度も読む手が止まった。「ムカムカしたから」という理由だけで村人を機関銃で撃ったり、女性と見るや仲間と連れ立って強姦したり。あまりにも野蛮な行為の数々に、「信じられない」という言葉しか出てこない。 撫順戦犯管理所という場所 収容されていた戦犯たちは、自分たちが中国人に対して行ってきたことを知っているがゆえに、今度は自分たちがどんな仕打ちを受けるのかと戦々恐々としていたという。自分たちがやってきたことを棚に上げて、いったいどの面を下げて、と言いたくなる。だがそういう認知のあり方こそが、戦時中に作られてきたものなのだろう。 実際の撫順戦犯管理所は、人道主義政策に基づいた場所だった。強制労働はなく、食事・運動・文化・学習あらゆる面での保障があり、「相手の文化を尊重せよ」という方針から、中国人たちが食べ物に困っている状況の中でも収容者には白米が与えられていた。肉親や友人を日本軍に殺された職員たちが大勢いたにもかかわらず、人間としての尊厳を奪いつくした日本人に、尊厳を保ったまま生活できる環境が整えられていたのである。 罪の意識の欠如 なぜ彼らは「悪い」と思えないのか 最も衝撃的だったのは、聞き取りに応じた当事者たちに罪の意識がほとんどないことだった。正確に言えば、「悪いことをしたとは思っているが、あれは命令されてやったことだ、状況的には仕方なかった」という主張をする人が多かった。 著者はこれを「行為者としての責任の放棄」として批判する。「上官の命令を承ることは、直ちに朕の命を承る義なり」という軍人勅諭を盾に、「悪いのは命令者であり、自分たちはむしろ被害者だ」と言う。 この構図は旧兵士だけの問題ではないと著者は指摘する。敗戦後の日本人の多くも、戦争中の残虐行為を知るたびに「悪いことをした」と一瞬思いながらも、同時に「それが戦争というものだ」と思考の上で防衛線を張り、「それ以上言わせないぞ」と過剰に身構えてきたのではないか。 「寝た子を起こすな」「国益を損なう」「賠償を請求されたらどうなる」 そうした感情的な過剰防衛を、戦後世代もそのまま引き継いで生きてきたのではないか。そしてこの論調は最近すごく聞き覚えがある。 感情を取り戻すということ 著者は、撫順戦犯管理所での収容者たちの変化にひとつの手がかりを見出している。自分が殺した相手に「顔」があること、その人が1人の人間であり個人であると認識して、その苦しみや悲しみを想像できるようになること。それは同時に自分自身も苦しみや悲しみを感じる人間であることを取り戻すことだと著者は分析する。 一方で著者は日本人には悲しい、苦しいという感情が鈍麻しており、相手に対して「かわいそうだ」「むごい」と感じる力も自分自身が「つらい」「苦しい」と感じる力も弱いという結論を出している。自他の悲痛に対して無感覚になってしまっている。 現代への問い これはウィークネスフォビア、自分自身の弱さやダメさを直視することへの恐怖と呼べるものではないだろうか。弱さを見ないようにする、そんなものはないと思い込もうとする思考が染み付いた先にこの感情鈍麻があるように思える。 著者は戦争に直接かかわらなかった世代も老兵たちが犯した過ちと、それによって背負った罪悪や苦しみに共感することで、感情をより豊かに耕すことができると言う。知識と同様に、いや知識以上に感情は大切に育てられなければならないと主張している。 当時の日本人だけの問題ではない。おそらくこれは今の日本社会にも続く性格だと思う。だとすればこの本が問いかけていることは、過去の清算にとどまらず、今を生きる私たち自身への問いでもある。 この本が刊行されたのは1998年である。2026年のいま、さらにその問いが重要な情勢になっている。 他者の痛みや悲しみを知覚するには自分の痛みや悲しみを知覚できなければならない。 自分の感情を耕すことがまずその一歩になる。 - 2026年4月5日
私の戦後80年,そしてこれからのために岩波書店編集部読み終わった感想戦争反対戦争戦争関連”一九四五年以前生まれが総人口の約一二%となった二〇二五年は、第二次大戦で時代を分ける意識が共有され、“生身の戦後”として語り得る最後の節目である。戦争体験者の声、そしてそれぞれの世代が自らの生の時間との重なり合い、さらに未来への思いを寄せた、四〇名余によるアンソロジー。” 戦後80年の区切りに今こそ戦争体験者の声や、戦後を生きる様々な職業、立場の人の声を集めてアンソロジー作ろうぜをやるのが我々の岩波書店である。 戦争当時、子どもだった人もいればまだ20代や30代の人もいる。 職業も様々で当時総理大臣だった石破茂、ジャーナリストの安田菜津紀、長崎出身の俳優・松重豊などなど。あらゆる分野の人からの戦争と今、そしてこれからに対する思いを読むことができる。 私がフィクションが好きだから、ということもあるがやはり映画監督の塚本晋也、アニメ脚本家の辻真先あたりの言葉は重い。塚本晋也は『戦争をするかどうかは、権力を持つ人が決めますが、戦場に行くのはぼくたち一般人です』だからこそ一般人目線で見られるように映画『野火』を作成したとのことだった。創作物のいいところは”いいトラウマ”を経験することができることだと言い切り、かつて自分が『はだしのゲン』で経験した、こんなことは回避しなくてならないと強く思えるような”いいトラウマ”を経験できるような映画を作っていきたいと言っているし、彼の志はフィクションを信じているからこそであり、映画を作るものとしてのプライドだろうと思う。 アニメ脚本家の辻真先は1932年生まれだ。大人たちが戦争はいいものだと言っている様子を見てきて、反戦という言葉で戦争に反対するよりも戦争を嫌っている人を増やしてつながっていく必要があるのではないかと提言している。この考えには一理あるとも思った。たしかに戦争が嫌だというのは戦争に反対とは厳密には違う。厭戦、嫌戦のほうが近い。当時の世間の空気感を知っているからこそ、反対よりも忌避する姿勢でつながって、それを大きくしていくことのほうが有効だという考えに至ったのかもしれない。 個人的に一番痺れたのは漫画家の山岸凉子だった。1947年生まれで女性の漫画家として生きてきた彼女が、どう社会を見つめながら、漫画を描き続けてきたのか。女性への差別や、日本の戦争に対するアジアへの贖罪の意識の薄さ、AIの誕生。それぞれを地続きに考え、クリエイターとして彼女が持つプライドを書いてくれていて、正直彼女の文章だけでもこの本を読んでよかったと思う あまり話題にはなっていないようだったけど、世界がさらに悪くなっていくなかで、その様子にくじけそうになっている人には勇気を与える本だと思う - 2026年4月5日
男らしさの終焉グレイソン・ペリー,小磯洋光読み終わった感想男性学武田砂鉄さんの「マチズモを削り取れ」で触れられていたので読んでみた 著者は異性装者であり、アーティストの男性であるグレイソン・ペリー。暴力的な継父など周囲の男性たちやジェンダーの縛りのせいで苦しんだ経験をもつ彼は、男性の最大の敵は、男性自身だと指摘している。 本書では主に男性性が支配する4つの分野について言及している。権力(男性が世界を支配する様子)、パフォーマンス(男性の服装と振る舞い)、暴力(男性が犯罪や暴力に手を出す様子)、感情(男性の感情)。 それぞれの分野で男性がどう支配し、その結果どのように自縄自縛に陥っているのかを明快な文章で描かれている。 男性性の被害者は女性だけではない。男性自身もまたジェンダーを演じることに駆り立てられている犠牲者であると著者は主張している。 著者は、人種、階級、性別、セクシュアリティ、経済学、人類学、社会学、および心理学など、さまざまな分野を横断しながら、冷静かつユーモアを交えて分析をしておりは本書の最後に、男性向けの未来のマニフェストを提示していた。 男性は傷ついていい権利、弱くなる権利、間違える権利、直感で動く権利、わからないと言える権利、気まぐれでいい権利、柔軟でいる権利、そしてこれらを恥ずかしがらない権利がある。これらの権利を行使していって、社会で規範とされている男性像、男らしさの固定観念から自由になることを目指そうという応援が含まれた1冊 - 2026年3月28日
女の国会新川帆立フェミニズム読み終わった感想こういうのが読みたかった~の本 「あの本、読みました?」で取り上げられていて絶対におもしろいだろうなと思ったら本当におもしろかった。 私は日頃から”池井戸潤作品の登場人物が男女逆転した奴が読みたい”と考えていた。女性が企業のなかや政治の場で権力争いや派閥争いをするのが見たい。女vs女で人脈や策略でのし上がるところが見たい。そのなかで立てる義理やあふれる人情が見たい。 そんなときに知った『女の国会』 「女にうまれてごめんなさい」 そんな遺書を残し自殺した国会のマドンナこと”お嬢”。敵対する第一野党の”憤慨おばさん”こと高月が死の真相を探り始めるポリティカルミステリである。 政治の場で女が働くとはどういうことかを微細に描いていて、読みながら怒りにえ、心が削られた。 日本で女性が政治家になるのは新品のドクターマーチンで整備されていない山道を歩くようなものだ。 そんななかで終盤の選挙の場面は胸が熱くなる展開だった。 最後の結末の持っていきかたには批判もあると思う。 ただ私は『教皇選挙』がそうだったように見る側の偏見や規範に爪を食い込ませて、それをばりばりと剥がすようなものだったと考えているし、悲しいかな現時点での日本の政界のことを考えるともっともっと閉塞的だろう。 問題提起でもあり、エンパワメントでもあり、エンタメとして、ミステリとしてもとてもおもしろい本だった。 実写化するなら吉田恵里香脚本でNetflixで1時間×8話でやってください。読んだ人は私と実写化妄想しましょう。
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