ヴォルデモート卿
@blinking0182
2026年8月16日
タイタンの妖女
カート・ヴォネガット,
浅倉久志
読み終わった
@ 真栄里
人におすすめするタイプの本ではないと思う。
もともとSF小説は、昔〜現代の社会とは異なる条件や常識の中で、人の心がどう動くか、という思考実験的な試みをしている感じが好きでたまに読む。未来技術すげー、ワクワク!という感じで
はあまり読まない。もちろん、この本もそんなワクワクを感じさせるものではない。
あらすじとしては、1人の男性と1人の女性の運命が、ある人物の予言をきっかけにこっぴどく痛めつけられる。そのある人物は太陽系のあらゆる場所、未来を含むあらゆる時間に同時に存在し、さまざまな場所で裏から表からこの男女の運命を操る。しかし、後半でその人物も、また別のある者に操られていたこと、そしてそれはまるで神のように地球自体も太古の昔から、ある目的のためにコントロールしていたことが明らかになり、、、と書いてみたら厨二病の如きストーリーだ。しかし、そこにはその設定に見合うシリアスさも、読んで共感性羞恥に陥るような純情さもない。たぶん、語り手が男女の悲劇を含む物語全体を、余り感情を籠めずに距離を取って語っていること、常にナンセンスな冗談で茶化してくるからだと思う(翻訳なのもあるかも)。それらが物語の中の出来事を「大したことない」って言っているような印象を受けた。
実際、地球の運命すら操っていたある者の目的も本当にしょうもなくて、無意味で、その辺りがこの作品のテーマなのかなとも思う。神さまがいたとしても、その目的みたいなものは僕らから見たら非効率で意味不明で、そもそも僕ら一人一人の生き様とか何かを成し遂げたとかには興味なくて。でもだからこそ、僕らは地球救済や人類のため、宗教的な使命といった大きな目的のために生きなくてもいいんじゃないか?みたいなことを感じさせる。
実際、物語の後半でなにも成し遂げられなかった男女とその息子は、最後はそういった何か大きなものから解放されて、木星の衛星の中で、3人で独特の関係性を気づきながら、わりと満足してその生を全うする。その姿が割と印象に残る。
最後らへんの「私を利用してくれてありがとう」や「身近な誰からも必要とされないのが人生におけるつらいことだ」みたいな彼らの発言は、顔の知らない誰か・ナニカのためじゃなくて、目の前の人たちを大切にしたいと思えるような説得力があったと思う。
語り手や神さまなんかの視点、いわゆる大局的に見たら彼らの人生は「大したことない」だろうけど、彼らは彼らで一生懸命に、必死で生きた、っていうのをその時考えて、何というかそれで良いのかもと感じた。言葉にしづらいけど、地道に生きることの良さみたいな。人生って運命みたいなのだったり、成り行きみたいなのに翻弄されるだろうけどそれの大きな意味なんて考えても正解なんてわかんないし、まして本当の意味は知らないほうが良かったレベルでしょうもないかもしれない。その答えを求めるより、目の前の出来事や人に真摯に対応していくことが大事なのかなーって思った。終始ニヒリズムだけど、少し前向きにしてくれる作品だったのかなとも思う。
少し感想書こうと思ったら感想書きづらすぎて、逆に長くなった。内容が面白い、と言い切るのは難しい作品。でも、内容について考えるのは面白い気がする作品。
爆笑問題の太田光はこの作品に感動して、事務所の名前を「タイタン」にしたということを読後知りました。受け取り方ってやっぱり人によってかなりバラつきあるんだろーなー

