
にゅっくり朝丸ロケット
@ntr_
2026年8月17日

かつて読んだ
再読中
蔵書
何という帝の御代のことでしたか、アニメやエロゲギャルゲTCGとオタク向けコンテンツがドカドカとばら撒かれていました中に実は大して市場規模も大きくはなくとも、何よりも時めいていたライトノベルというものがございました。
やあ、そんな時代に思春期を過ごしたボク様だよ。
あの時代、多くの中高生が読書(ラノベ)を嗜んでいたわけだけれども、実際のところラノベはやや見下される立場にあったのも事実。
なんせラノベは読みづらかった。
それもそのはず、ライトノベルレーベルの起源は筒井康隆『時をかける少女』(これ自体は角川書店発刊の小学校高学年向けジュブナイル)の文庫本を原田知世を起用して実写ドラマとして放映された際、当時の中高生が先を争って買い求めたことに遡る。
この時初めて「安価な文庫版を数多く売れば中高生のお小遣いをかっさらって一財産築けるっ樹!春樹カンゲ樹!」と角川春樹が悪魔的発想に思い至った……というのは今思いついた嘘なんだけどね、ライトノベルレーベルという商売の構造はぶっちゃけそういうものなのよ。
しかし筒井康隆みたいに筆力の高い若手(当時)なんてそうそういるものではない。
言い方は悪いけど薄利多売の商売だと短いスパンで大量のコンテンツを供給しないとならない。
必要なのは文学性ではなく時代性、生産力、売上に応じて飽きられる前に続刊が出せること!
そりゃあね、作家さんたちも文章力で読みやすくしようなんて手間はかけていられませんよ。
セリフは多く、地の文は少なく、流行りに合わせて読者の知っているものを採り入れて説明の労を省く、幸い挿絵は当代随一のイラストレーターが担当してくれるのが慣例になってる(た)んだからキャラクターデザインはパーフェクト以上のものが約束されてらあ!
ものすごく偏見を持って言ってるのは自覚してるけど当時のラノベってこんな感じだったんだわ。
もちろん秋田禎信や神坂一、少し遅れて谷川流みたいな超上澄みもいたっちゃいたんだけどもさ。
でも基本は読みづらかった。
ケータイ小説やなろうが下限を更新するまではそのせいでバカにされ続けた。
それでもオタクたちがラノベに金を払ってたのはね、彼らが興味を持っているものを扱う文芸作品が事実上ラノベからしか供給されてなかったからなのよ。
アーケードゲームのオンライン対戦を通じて巨大ロボットで戦いながらボーイミーツガールする文芸作品があったか?
エンタメ路線とは言え直木賞にTRPGのリプレイをめいっぱいマッシュアップした剣と魔法のファンタジーがノミネートされるか?
警官が15連発のベレッタを下げるほど治安の悪化した平行世界に飛ばされたちょっとえっちな妄想をかき立てる美人暗殺者が謎の宗教団体とバトルする壮大なドラマが……いやこれは角川じゃないほうの春樹が書いてくれてるわ。いい時代だわマジで。
とにかく、当時のオタクはバカだから稚拙な文章しか読めなかったとかではなく、ある程度苦労してラノベを読んでたってとこがあったのよ。
そんな時代、通学路にあった古本屋でね、こいつを見つけちゃったわけですよ。
初出が1985年なので当時としても少々ノリが古かった面はあるとはいえ、インテリジェンスをかなぐり捨てた純エンタメ!オタクがオタクに向けて発信している時にしかありえない“アレ”な空気!なのにそんなものが普段読んでる文学作品と遜色ないたしかな日本語で流麗に綴られてる妙な感じ!
コッテコテのご都合主義てんこ盛りバイオレンス活劇とクッソマニアックなカーアクションの悪魔合体!
これ、これだよ今まで読者(自分)がラノベに求めていたものは!
第2巻目にあたる「爆走!逆ハンぐれん隊」にすっかりやられてから数ヶ月、あちこちの古本屋を巡ってなんとか全巻揃えましたよ。
それはそうとだな、これ作者の名前が……ふーむ、あの名著「蓮如」でボク様を痛く感動させたあの人によく似ているね。
(当時)「大河の一滴」がビジネス書の数々を抑えベストセラーとして、モー娘。の新譜と同じ勢いで売れていたあの人と、かつては「青春の門」でオシャレ感度の高い若者たちの支持を恣にしていたと聞く文壇の人気者と名前が……うん、一文字も違わなかった。
いやでもあのオシャレな「雨の日は車をみがいて」と同じ作者……か?でもたしかに登場してるクルマが多少かぶってるな……?
そうか、五木寛之ってIQを自由自在に操作できるタイプの能力者なんだなってその時初めて知りました。
オタク作品の歴史的には00年代に流行った奈須きのこ「空の境界」みたいな伝奇作品を昭和の終わりに「風の王国」でリブートしたのも五木寛之ですね。
もちろん間に那須正幹「ズッコケ山賊修行中」が挟まるけど。
閑話休題。
本作の初出は先にも述べた通り1985年、掲載誌は「ベストカー」
作中のヒロインであるミハルの愛車が赤いレビンGTV……時期的に多分AE86、ハチロクが現役だった時代ですわ。
一方で僕が本作を読んだのは藤原拓海がプロジェクトDに参加してイタチか何かに驚いてハンドル操作を誤ったシビックをぶち抜くというクソ展開を披露していた頃。
エンタメ作品としてはかなり時間が経ってたにも拘らず色褪せることなく面白かったこれ、なんと今読み返してもちゃんと面白いんですわ……
何これ……
