詩 "スロウハイツの神様(下) (..." 2026年8月28日

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2026年8月28日
スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)
続きが気になって一気に読み。読後感が良いし、上下巻で長く彼らを見守ってきたのに、もっと更に未来も気になる。最初はどのキャラにも共感できなかったのですが、下巻を買う頃には全員に愛着が湧いていました。救って、救われる話。 以下好きなシーン(ネタバレ) 詐欺を繰り返した母を毛頭許す気などなかった環が、母の誕生日に妹の桃花がなけなしの小遣いをはたくのかと思うとやるせなくて、黙っていてくれるなら、と一度だけプレゼント代に出資した話。何を買ったのか聞くと掃除機だった。 ------  情けない話だが、たったそれだけのことに、環は母親の声と顔を思い出してしまった。いてもたってもいられなくなって、こっそり彼女の家の前まで行ってしまったのだ。  : 母はその間いつだって、念入りに髪と化粧をチェックするため鏡を覗いていて、動かなかった。その母が、私の出した金で、掃除機を選んだ。真珠でも宝石でも、服でもなく。あの人、そんなものを選んだのか。  :  見上げているうち、視界の黄色い明かりがどんどん滲んで揺れてきて、環は慌てて目をごしごしと擦った。私は泣いてなんかいない。そう言い聞かせて、建物に背中を向ける。走ってそこを後にする。早く、アパートが見えなくなるところまで走りたかった。そうしなければ、自分がどうなってしまうのか、わからなかった。  数年後、母が死んだ時、葬儀の席で桃花に教えられた。 「お姉ちゃん、怒らないでね」そう言って、教えてくれた。桃花は、母に伝えていた。その年の誕生日プレゼントが、環のバイト代によるものだったこと。死んでしまうその少し前まで、彼女はそれを「たまちゃんが買ってくれた掃除機」と呼んで、使っていたこと。 「怒らないよ」と環は答えた。「怒らないよ、桃花」微笑みながら、だけど、手にしたハンカチを皺くちゃになるまで、ぎゅっと握りしめていた。その力を少しでも抜くと、どうなってしまうかわからなかった。あの日と同じだ。 ----- 詐欺師の娘になったことで辛い目に遭って、環は絶対に母を許さないと決めているけれど、それでもたった一人の母なんだなと思ったシーン。きっと血の繋がらない他人に同じことをされたら許さないという気持ちは絶対揺らぐことはないのに、母にとって自分は大事な娘なのだとか健気さや愛を感じてしまうと、それが本当に些細な言動だったとしてもつい許してしまいそうになる。きっとこの場面の環は許してしまいそうになる自分を必死に抑えていたのだろうなと思う。このシーンで私は泣きました。
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