
巻貝雫
@makigaitown
2026年9月2日
喋々喃々
小川糸
読み終わった
谷中で古着物屋を営む主人公の道ならぬ恋の物語。
主人公の栞は、四季の移ろいを味わう感性の持ち主で、彼女の暮らしぶりに四季をしっかり味わう生活の豊かさと美しさを感じます。
不倫物というとどうしてもドロドロしたり刺激を追い求める恋であったり道徳観に悩んだりする恋という感じがしますが、刺激的な要素はなく、相手の心と身体と人生に染み込んで、魂まで一つになりたいと願うような恋のお話でした。
読者である私たちはらままならない孤独と不安を抱える等身大の栞の傍で彼女の生活を眺めてさせてもらっているのです。
恋の前にまず生活があって人生がある、そして一つの恋の前も後もままならない自分を抱えた人生があるんだな、としみじみ感じました。
雪の下で芽吹きを待つふきのとうを愛おしく待つような、そんな読後感になる小説でした。