あおい "ラスト・ワルツ ジョーカー・..." 2026年9月5日

ラスト・ワルツ ジョーカー・ゲーム
シリーズ4作目。 表題作になると思われる『舞踏会の夜』が印象に残った一冊でした。 読み始めた時は、女性目線は珍しいなと思ったくらいでしたが、華族というしきたりに縛られた中で自由を求めていたのが顕子なのかなと思います。 自由なんてものはないこと、自分の生きている世界で自分がどう生きるかを俯瞰できている顕子は、賢いのかもしれないけれど、諦念を感じさせる存在でした。 結城中佐が関わるなら、確かに顕子くらいのキャラクターじゃないと務まらないなと納得できる人物でした。 『情報は集めるより使う方が難しい。』 ここにスパイ適性の比重が大きいのかなと思いました。 作業より判断の方が難易度高いですから。 『致命的な失敗は、むしろ自身が得意とする分野で起こりやすい。』 成功パターンが見えてると思ってる時ほど、そこを突かれると崩れやすいですよね。 訓練中にそこをえげつなく抉ってくる結城中佐すごすぎる… そこで折れない訓練生もすごいですが。 プライドだけ高いと放り出しちゃうと思うんですが、「なぜ」その指示をしたのか、に思いを巡らせられるあたりに知性を感じました。 4作目まで読んでも結局D機関のDの意味はわからず、まだ続編があるのかも、という雰囲気なのが気になります。 裏の裏の裏まで読んでもまだ足りないスパイの手口、これを考えられるのすごいなと思います。 陸軍と海軍でそれぞれに独立した諜報機関を立てるとか、コスパ悪いなと思っちゃいますが、それだけ根本が違うんだろうなと思ったりしました。 目的が一緒でも、価値観が相入れないんだろうな、と。 D機関は陸軍大学校卒ではなく、一般の大学卒を採用しているので、海軍だとしても軍学校そうではない以上相入れないんでしょうね。 D機関は目的から手段を構築しているので、結果を出しやすい仕組みになってるんだなと思います。 現代社会でも、常識とか慣習に囚われていると目的まで遠回りしたり、十分な成果を得られなかったりするので、結城中佐が作ったシステムは効率的だなと理解できます。 効率的でも感情が納得しないというのも人間のあるあるなので、そのあたりの魅せ方がシリーズ全編通してとてもうまいなと思いました。 かっこいいリアリティのあるスパイ小説を読みたい方にはおすすめです。
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