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あおい
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@booklover_aoi
子どもの頃から活字大好き。 絵本、漫画雑誌、図鑑、教科書、資料集、パンフレットなど、活字ならなんでも読みたかった幼少期。 卒論でさすがに活字を読みすぎたようで、社会人になってから少し読書から遠のいてましたが、ここ数年また読書にハマり始めました。 現代小説も好きですが、設定作り込みファンタジー、ノンフィクションも大好きです。
  • 2026年9月25日
    夏の陰
    夏の陰
    『永遠についての証明』で気になって読んでみました。 人を描くのがとてもうまいな、と思いました。 ポジティブな面だけではなく、ネガティブな面もしっかり描写していて、それが作品に必要な要素になっていると感じました。 殺人犯の子どもと、被害者の子ども、どちらにも苦悩があって、周りの人たちのやさしさ、冷たさ、色んなものが混ざり合った状態で物語が進んでいく。 前半は岳の視点で物語が進みますが、父親から日頃より肉体的、精神的な暴力を受けていたのに、立てこもっていて二人きりになったわずかな時間に、父親の違う一面を見て、その後の行動につながったこと。 一見「あれだけ酷い目に遭わされているのになぜ」と思うと思うのですが、極限状態であったこと、親の良い面を信じたい思いがあること、様々な要因が絡み合った結果なのだと思いました。 そのあたりの心理描写が、そこまで細かくないのに伝わるのが岩井さんの技量なのだなと。 剣道のルールを知らなくても引き込まれる文章で、武道経験者なのもあって試合前の空気や、試合中の集中した感覚を重ねて読んでいました。 エピローグも書き方によっては蛇足になりそうだけど、私はこの話をこの書き方で書いてくれたことで物語に救いがあったなと感じられました。 情けは人のためならずという言葉を思い出しました。 読み終わってからも色々と考えさせられる作品でした。 『永遠についての証明』もですが、辛い箇所がまあまあしんどいので、受け止められる時に読むのをお勧めします。
  • 2026年9月24日
    永遠についての証明
    これは、久々のヒットでした…! デビュー作だなんて信じられない。 私は数学得意じゃないのですが、それでも面白くて読むのが止まらなかったです。 大学時代の友人とゼミの話で盛り上がってる時の感覚や、好きな物に没頭している時の集中と興奮など、自分の感じたことのある感覚を再体験させられて、そこからの挫折、孤独は読んでいても本当に辛かったです。 私は暸司も熊沢も佐那も小沼も平賀も、どこかしら自分と似た性質を持っていると感じたのもあって、誰かが明確に悪いとは思えませんでした。 関わり方が少し違っていたら違う流れになったかもしれないけど、戻ることはできないので、人は苦悩して後悔するのだと思います。 大学を卒業していく過渡期はどうしても疎遠になったりしていく人がいて、大学に残った暸司だけがそのままの時間を生きているという構図になったことで、読み手が暸司の孤独や寂しさを理解しやすいようになっているなと感じました。 読み終わってタイトルに納得するような作品はよい作品が多いと思うのですが、この作品もそうだなと感じました。 2026年読んでよかった本のうちの1冊になりました。
  • 2026年9月19日
    猫のあしあと
    シリーズ2作目。 猫の性格を捉えた軽妙な語り口は1作目と変わらず。 ただ、その猫のことをエッセイを通じて知るからこそ、別れの描写が読んでいても辛かったです。 動物との別れは経験したことがあるけど、何度も経験しても慣れない。 その動物の形に穴が空いて、どんなに似ていてもほかのものでは埋まらないという表現を見たことがあるけど、本当にそうだ感じます。 喪失を経験しても、それでも町田さんは大雑把な保護猫ボランティアから猫を引き取り、猫のことを考えながら生活をしていくのが町田さんの日常なのだなと思いました。 可愛いだけでは済まない、「動物と暮らす」ということの楽しいところも辛いところも描かれたエッセイだと感じました。
  • 2026年9月19日
    ぐるぐる♡博物館
    博物館は個人的に好きなので、全国の博物館で知らないけど面白そうなところはあるかな、と思ったら、奥深すぎて時々驚きながら読みました。 三浦しをんさんなので下ネタの方もいきそうだな、と思っていたら、案の定冒頭の縄文から飛ばしてました…。 以前青森の縄文時遊館に行ったことがあり、その時に見たものを思い出しました。 動物型土製品と呼ばれる動物モチーフの置物みたいなものもあったりしたし、縄文土器も土偶もいろんなデザインがあって面白かったのですが、縄文時代はまだまだ謎が多いみたいなので、博物館に行ったらまた新しい発見がありそうだなと思いました。 個人的にはめがねミュージアムに行ってみたいです。 併設されているめがねショップも気になる。 石やボタンなど、特定の物に特化した博物館も奥深すぎて読んでて楽しかったです。 やわらかい石があるとか知らなかったですし、展示方法も遊び心と性質の理解につながる方法で、展示される方の熱意を感じました。 今後は旅行に行く時にその土地の博物館も調べてから行きたいなと思いました。
  • 2026年9月19日
    復讐は合法的に (宝島社文庫)
    設定と構成上手く、世界観に違和感なく最後まで読めました。 フィクションだから多少無茶な設定でも読めますが、これドラマ化とかするとエリス役の俳優さんはかなり大変だと思います。 男性と女性の骨格が違うことで、動きがどうしても骨格に寄ってしまい、男性味が出ちゃうと思うんですよね。 ロングヘアーのウィッグでオーバーサイズのジャケットとか羽織ればある程度カバーできるのかな、とも思いますが。 リアルに動いている状態で登場人物が全員女性だと疑わないだけのメイクと体の動かし方の技術は相当なものだと思います。 小説なので、そういう設定と思って読んでましたが。 表紙の印象から想定してたより結構しっかりしたミステリだったので、どんな結末になるのか気になって読み進められました。 お金を踏み倒す元彼の話から始まりましたが、やり方が周到かつ絶妙なダメージを与えていて、ちょっとすっきりしました。 エリスとメープルの関係性も謎なままだし、そもそもなんでエリスは弁護士辞めたかわからないし、続編で明らかになるのかなという感じですね。
  • 2026年9月17日
    振り回されるのはやめるって決めた 「わたし」を生きるための自他境界
    前から気になっていた自他境界線について知りたくて読みました。 確かに人間関係を築く上で適切な距離感は大切ですが、日頃明確に意識したことはなかったです。 『バウンダリーとは、自分と他者をはっきり区別し、健全な人間関係を育むために自身の力をより効率よく使えるようにするもの』 自分が能力を発揮するために明確なラインを引くことが大切、なんてあまり考えたことがなかったです。 過去にあまりいい影響をもたらさない人間関係に線を引いたことはあっても、「自分の力をより効率よく使えるようにするため」という意味ではなかったです。 「関わっていると嫌な気持ちにさせられるから」「相手がやりたくないことを自分に押し付けてくるから」など、起きた事象に対して、これ以上不快な思いをしたくない、余計なことに時間を奪われたくない、といった理由だったと思います。 これを認識できただけで、この本を読んでよかったなと思いました。 『バウンダリーは、負荷と重荷を区別することで、私たち自身と他者がそれぞれどこまで責任を負うべきかを明確にするものです。もし、今自分が背負っているものが負荷の範囲内で余裕があるなら、そこに他者の荷物を一部入れ込むことも可能でしょう。しかし、自分の荷物が重荷であるとわかった場合は、負荷の範囲に収められるように誰かの助けを求めなくてはなりません。』 自分が人との関係性でしんどくなる時は、大体重量オーバー、過積載状態になっている時だなと気づきました。 自分が大変でも人が困っていたら助けたいと思ってたのですが、それが時々しんどいなと感じることもあって、なんでなのかなと思っていたら、自分の負荷にプラスして他人の負荷を背負った結果重量オーバーになってたということなんだなと思いました。 『バウンダリーは自己中心性とは無縁であり、むしろ愛や配慮、信頼、尊重、思いやりを土台にしているのです。』 ただ、バウンダリーは必要だし、時には主張が必要なこともありますが、基本的に相手のことを大切にするためのものであり、自己中心性のものではないというところを理解していないと、誤った理解でバウンダリーを主張してしまうことになるので注意が必要だなと思いました。 これをきちんと理解をしていないと難しい。 相手と自分を大切にするためにも、適切なところに境界線を引くことが必要なんだということを学びました。 こういう知識は学校教育でも取り扱ってほしい…。 他にもとても有意義な学びを得られた本なので、時々思い出しながら自分にとって適切な境界線で人と接するようにしていきたいと思います。
  • 2026年9月16日
    猫にかまけて 猫にかまけてシリーズ (講談社文庫)
    おそらく町田康さんの本を初めて読んだと思います。 名前は知ってたけれど、なんだか読む機会がなく、猫のエッセイを書いてることを知って読んでみました。 特徴的な文章ですが、読みにくいということはなかったです。 私は生まれた時から2匹の猫と暮らしていたのですが、猫は本当に興味深い動物だと思います。 うちの猫は兄弟でしたが、顔立ちも性格も全然違うし、身体能力も違う。 人のそばにいたい時は寄ってくるし、そうじゃなければ人のいない部屋にいたり外に出たりと、自由気ままな動物だと感じていたのを思い出しました。 ココア、ゲンゾー、ヘッケ、奈奈という猫たちが登場しますが、みんなそれぞれに個性があってとても面白かったです。 猫に語らせる時に「マチダさん」と自分のことを呼んでいるように書いていて、猫たちと町田さんの自立した関係性を感じて、お互いによい関係を築いているのかなと思いました。 猫と暮らすのはかけがえのない時間だったということを思い出しながらの読書でした。
  • 2026年9月16日
    九重家献立暦 (講談社タイガ)
    消化不良でもやもやした読了感でした…。 冒頭で、主人公は祖母(血縁上は叔母)と、母が駆け落ちした相手の息子と同居することになります。 木綿商であった九重家の行事を民俗学の卒論にしたいと母の駆け落ち相手の息子(主人公の同級生)が下宿してくることでこの同居となったわけですが、父の居場所を突き止めるために父の駆け落ち相手の家に住むってなかなかぶっ飛んでるなと思いました。 後半で祖母と母が連絡を取っていることがわかるのですが、祖母の言い分の身勝手さと、主人公の視野の狭さ、どちらも理解できずに非常にもやもやしました。 人の目を惹きやすい容姿だからと言って、男に媚びることになるから笑うことをやめろとか理不尽すぎる。 アンバランスだから変な男が寄ってきやすくなるんだろうし、変な男が寄ってきても自衛できないし、笑ったりしないことで友人関係も希薄。 子どもの頃は養育者の影響が大きいと思うのですが、ある程度大きくなって自分で考えることができるようになれば、自衛の方法だってネットや書籍で調べられるし、友人関係だって上手く築く方法はあるはず。 おかしいと思いながらも言われた通りにして、うまくいかないと相手のせいにする他責思考だからいつまでも自分は不幸だという考えから抜け出せないのでは?と思いました。 性被害に遭ったことを同性に相談して、その相手が自分に対してコンプレックスを持っている場合には自慢や自意識過剰と捉えられることはあることはわかりますが、期待した回答が得られなければ大学の学生相談窓口を利用するとか、行政の窓口に相談するとか他にもできることがあったのでは?と思ってしまいました…。 教授と友人どちらにも取り合ってもらえなかったから、そこで心が折れてしまったのかもしれませんが。 主人公の気持ちの流れや思考がいまいち掴めなかったので、どうしてその行動に至るのかが理解できなかったからもやもやしたのだと思います。 民俗学の知識は面白かったし、日々よ献立や行事のメニューについての描写は楽しめました。
  • 2026年9月12日
    脱・自責思考 マンガでわかる我慢しない生き方
    Testosteroneさんはわかりやすい言葉で本質を教えてくれるので、時々思考が行き詰まった時に助けられています。 言葉で伝える力が充分にあるので、個人的にはマンガはなくてもよかったかな。 マンガが入るとKindleはテキストデータではなく画像データとして処理するのか、テキスト部分でもハイライトできなくなるので、いいなと思ったところにハイライトできなかったのが少し残念。 嫌なこと言ってくる人には反応するな、と繰り返し書いてますが、『反応しない練習』にも通ずるところがありますね。 私は疲れてなければ受け流せるんですが、疲れてくると真っ正面から受けてしまって受け流すのに余計な労力を割いてしまうので、そもそも疲れないようにするのが大事だなと思いました。 疲れると判断力も鈍るし、感情的になりがちだし、いいことない。 加えて自責思考だとさらに本来追わなくていい責任を負ってしまってしんどくなっちゃうので、「自分を幸せにする」という思考を意識していきたいと思いました。
  • 2026年9月12日
    海神の娘 黄金の花嫁と滅びの曲
    シリーズ2作目。 全く没入できないまま読み終わってしまいました…。 沙文と沙来の確執が軸になっていますが、いまいちその感覚が実感できないままストーリーだけが進んでいってしまった感じがしました。 政に関しても、海神のせいにしておけば大体のことは上っ面だけでも同意を得られるから、登場人物が主体的に行動している感じがしない原因なのかも。 だから困ったことが起こると登場人物は苦悩だけしてて、状況に流されてる感覚になるのかなと思いました。 人が悩みながらも主体的に生きていくストーリーが好きなので、私にはハマらなかったのかなと思いました。
  • 2026年9月12日
    海神の娘
    海神の娘
    世界観の構築が上手いな、と思いながら読みました。 言葉の選び方で世界観を構築してるのだと思います。 ファンタジーはどこまで作り込むかで読者の没入感が変わると思うのですが、「この世界の理」を読者に理解させられれば現実世界では非常識なことでも受け入れる下地が整うのかなと思います。 海神が何者なのか、どこまで世界の根幹に根ざしているのかがわからないところから物語は始まりますが、少しずつ理解できる構成になっていました。 琳が憤りを感じた託宣の理由が最後の話で明かされるのですが、神と呼ばれるものが人の理から外れたものであることが感じられるようになっていました。 現実的というよりは神話のようなイメージの読後感でした。
  • 2026年9月11日
    花菱夫妻の退魔帖 六
    シリーズ6作目。 長らく追いかけ続けた浅草の事件の真相の核心に迫ってきて、次作が気になります。 薗部らくというキーパーソンが登場したのもあって話が大きく動きましたが、これはどう進むんだろう。 警察との繋がりもできたので、より情報が入ってきやすい体制が整ってきたなと思います。 テイカーとギバーという考え方がありますが、南條や薗部らくの姉はテイカーだったんだなと感じました。 人から利益を搾取するために頭を使う人たちだから、常識や性善説に則って考えると行動動機が読みにくい。 松印のことや南條と銀六の関係性など、まだわかっていないことがあるので、今後明かされるのかなと思っています。 後半の怒涛の展開で忘れてたけど、婚礼の場面が描かれていて、当時の華族の結婚式ってこんな感じなのかと思ったりもしました。 家で支度して、花嫁衣装で車乗るの大変そう。 綿帽子とか車の天井に引っかかったりしそう。 衣装も重いだろうし、汚すの怖いから気を遣うだろうし、会場着いたら体も心ももう疲れてそうだなと思いました…笑 旧鹿鳴館で結婚式が行われていたことも知らなかったので、時代に思いを馳せるのが楽しかったです。 次作も楽しみです。
  • 2026年9月9日
    花菱夫妻の退魔帖 五
    シリーズ五作目。 今作も着物の描写と色々な食べ物がおいしそうに感じるのは変わらず。 季節は秋になり、菊見をしたりと季節を感じるイベントが盛り込まれていて、当時はこういうことを楽しんでいたんだなと思いを馳せたりしました。 スマホとかないし、移動も楽しみつつ五感で楽しんでたのかなと思いました。 今回は淡路の君も活躍の場があり、淡路島で得た淡路の君の印象もあって、淡路島に行く前とは印象が違うように感じられました。 悪霊を喰らうのか、成仏させているのか、今後そのあたりの謎も解けていくんだろうなと思います。 孝冬の兄実秋の関係性も少し見えてきて、浅草の事件の核心にも少しずつ迫っていくんだろうなという流れでした。 鈴子の細やかさは人をよく見ていて、想像もできるからこそなんだろうなと改めて思いました。 相手を慮って障子をきちんと閉めたり、警戒している子どもとの距離感のとり方をお菓子と言葉遣いで和らげたり。 自分が感じたことから考えて、どう行動すればよいか考えられる人だなと。 孝冬は人の警戒心を和らげたり、それとなく距離を詰めたりできるし、相手の様子からどのような人柄かを推し量ることができるので、この二人で行動してたら調査は捗りそう。 時代もあってみんな割とすぐ家に上げてくれるし、人の住所を教えてくれたりするので、「防犯とか個人情報とか大丈夫かな?」と思っちゃったりしますが、そういうおおらかな時代だったんですよね。 次作も読むのが楽しみです。
  • 2026年9月9日
    花菱夫妻の退魔帖 四
    シリーズ四作目。 今回は滝川家長男の嘉忠の縁談がベースになりつつ、依頼のあった幽霊騒ぎについて調査していく感じでした。 松印についても新たな情報が出てきたし、次でまた話が進むことを期待します。 物語の季節が残暑で、ちょうど今の季節と合っていて、着物の描写が想像しやすかったです。 暦が秋になったら、秋らしい装いを楽しみたいのはとてもわかるので。 次作も楽しみです。
  • 2026年9月7日
    花菱夫妻の退魔帖 三
    シリーズ三作目。 想定より飽きずに読み進められています。 今回は淡路島が舞台で、神事が中心なのかと思っていたら、そのシーンは意外にあっさりでした。 幽霊騒動が今回もありますが、その背景がやるせなかったり、人の業の重さを感じるもので、色々考えさせられました。 淡路の君は怨霊に近いものしか喰わないのかと思っていたら、そうでもないのかもとうシーンもあったり。 今回も着物の描写を楽しめました。 柄を見立てるのとか楽しそう。 羽織と着物と帯と半衿と簪、アイテムが決まってるからこそ深いこだわりを持たせてられるんだろうなと思います。 鈴子はあまりコントラストの強い着物を着ないのと、今作は淡路島の温暖な気候の雰囲気もあってかやわらかい色味のコーディネートが多かったように思います。 初登場の人物が多かったのですが、鈴子の物怖じのしなさが遺憾無く発揮されていて読んでいてちょっと気持ちよかったです。 『「おまはんは恐ろしい御霊にえらい好かれとる。それがええことなんか、悪いことなんか、どっちに転ぶかはうちには見えん。ただ、おまはんが漕いで出ようとしとる海は、嵐や」 訊き返す間もなく、キヨはひと息に言った。鈴子はぽかんとするほかなかった。なにを言われたのか、すべて理解できていない。しかし。 「漕いで出ずとも、嵐は嵐でございます。わたしは、家のなかで嵐をただ見ているわけには参りません」』 この返しがするっと出てくる鈴子はすごい。 しかも理屈で考えずに返してるあたり、普段から鈴子にとっては当たり前の考え方なのだな、ということが伝わる文章だなと思いました。 孝冬の溺愛度も増してきているのですが、節度を持った接し方なので胸焼けしないところもよいです。 自分のことを当たり前の様に思いやってくれるし、度胸も行動力もあるし、そばにいたら惚れちゃうよね。 四作目は東京が舞台なのかな。
  • 2026年9月6日
    花菱夫妻の退魔帖 二
    シリーズ二作目。 今作も着物の合わせの描写が楽しめました。 『淡い紅藤色の地に紫陽花が描かれた紗の羽織、衣桁には白いぼかしの入った鳩羽鼠の地にやはり紫陽花を描いた紋紗縮緬の単衣、象牙色の地に銀糸で観世水を刺繡した絽の夏帯がかかっている。』 着物は全然詳しくないのですが、色合わせやモチーフの組み合わせ方が読んでいるだけで楽しくて、想像ですが目の保養になっています。 鈴子が凛としたタイプの美人なのもいいです。 他にも雪子と朝子は好みが違うんだなとか、千津は年嵩だから少し落ち着いた色や柄を選びつつ、モチーフや小物合わせが上手いのかなとか、想像しながら読めるのがよかったです。 鈴子は物言いがはっきりしていて芯があるので、行動を追っていても安心感があります。 公家華族というものを全然理解していないので、そんな仕組みだったのかと感心しながら読んでました。 仕組みが複雑で、物語に必要な要素はかろうじて理解できているかなというレベルでなんとか読み進めています。 淡路の君が何故怨霊に近い幽霊だけを喰らうのかが今後わかるのかな。 次作も楽しみです。
  • 2026年9月6日
    花菱夫妻の退魔帖
    シリーズ二作目を読む前に復習で再読。 なんだろう、鈴子と孝冬の関係性が『薬屋のひとりごと』に少し似ている気がしました。 憧れと執着、が大きいのかな。 自分にない思考と、自分の境遇や悩みを同情や上っ面で誤魔化さない芯の強さに惹かれるのかなと感じました。 退魔帖とタイトルについていますが、退魔というよりは淡路の君が勝手に喰らっていくので少し印象が違うかもしれません。 ホラーは苦手ですが、元生きていた人間なら比較的大丈夫なのでこの作品は読めました。 服装の描写が詳細で、文字で読みながら想像するのが楽しかったです。 大正時代なら柄×柄で華やかさもあるし、半衿や羽織紐までこだわってたのかと思うと組み合わせを考えるの楽しそうだなと思いました。 着物なら柄と柄でも組み合わせ次第で喧嘩しないから、洋服よりチャレンジしやすいかも。 香木も燃やさないというのをこの作品で知りました。 炭であたためて香りを出すなら、煙たくならないよなと納得。 鈴子と孝冬の関係性も気になるし、淡路の君をどうするのか、鈴子の養い親たちの事件は解決するのか、次作が楽しみです。
  • 2026年9月5日
    悪い夏 (角川文庫)
    夏が終わってしまうので、積読にしていたのを慌てて読みました。 読み進めて、これは一気読みすべきだなと思って勢いで読了しました。 生活保護が関連した小説だと『護られなかった者たちへ』の印象が強かったのですが、こちらもまた違う意味で非常に印象的でした。 佐々木も愛美も、最後の結末に至るまでに何度か分岐点はあったのに、そこに気付けなかったり選ばなかったりした結果がラストに繋がっていましたが、一概に「きちんと選ばなかったあなたが悪い」と言えるのかどうか、考えてしまいました。 シングルマザーが3名いましたが、3者3様で、そのあたりもリアリティがありました。 以前『最貧困女子』という本を読みましたが、ここに通ずるものがあると感じました。 読み終わったあとに色々と考えさせられる本でした。
  • 2026年9月5日
    ラスト・ワルツ ジョーカー・ゲーム
    シリーズ4作目。 表題作になると思われる『舞踏会の夜』が印象に残った一冊でした。 読み始めた時は、女性目線は珍しいなと思ったくらいでしたが、華族というしきたりに縛られた中で自由を求めていたのが顕子なのかなと思います。 自由なんてものはないこと、自分の生きている世界で自分がどう生きるかを俯瞰できている顕子は、賢いのかもしれないけれど、諦念を感じさせる存在でした。 結城中佐が関わるなら、確かに顕子くらいのキャラクターじゃないと務まらないなと納得できる人物でした。 『情報は集めるより使う方が難しい。』 ここにスパイ適性の比重が大きいのかなと思いました。 作業より判断の方が難易度高いですから。 『致命的な失敗は、むしろ自身が得意とする分野で起こりやすい。』 成功パターンが見えてると思ってる時ほど、そこを突かれると崩れやすいですよね。 訓練中にそこをえげつなく抉ってくる結城中佐すごすぎる… そこで折れない訓練生もすごいですが。 プライドだけ高いと放り出しちゃうと思うんですが、「なぜ」その指示をしたのか、に思いを巡らせられるあたりに知性を感じました。 4作目まで読んでも結局D機関のDの意味はわからず、まだ続編があるのかも、という雰囲気なのが気になります。 裏の裏の裏まで読んでもまだ足りないスパイの手口、これを考えられるのすごいなと思います。 陸軍と海軍でそれぞれに独立した諜報機関を立てるとか、コスパ悪いなと思っちゃいますが、それだけ根本が違うんだろうなと思ったりしました。 目的が一緒でも、価値観が相入れないんだろうな、と。 D機関は陸軍大学校卒ではなく、一般の大学卒を採用しているので、海軍だとしても軍学校そうではない以上相入れないんでしょうね。 D機関は目的から手段を構築しているので、結果を出しやすい仕組みになってるんだなと思います。 現代社会でも、常識とか慣習に囚われていると目的まで遠回りしたり、十分な成果を得られなかったりするので、結城中佐が作ったシステムは効率的だなと理解できます。 効率的でも感情が納得しないというのも人間のあるあるなので、そのあたりの魅せ方がシリーズ全編通してとてもうまいなと思いました。 かっこいいリアリティのあるスパイ小説を読みたい方にはおすすめです。
  • 2026年9月3日
    パラダイス・ロスト ジョーカー・ゲーム
    シリーズ3作目。 今作は少し違った切り口で語られていて、また違う面白さがありました。 記憶喪失のスパイ、確かにありえるシチュエーションだなと思いましたが、その場合を想定して訓練するって本当にできるんでしょうか… あと、「失楽園」という言葉が渡辺淳一の作品のイメージが強すぎるので、『パラダイス・ロスト』にしてくれてよかったなと思います。 章題が『失楽園』なので、本のタイトル決める時に色々あったのかな、と想像しちゃいました。 結果的にはカタカナでシリーズ名が統一されていて、シリーズだとわかりやすくてよかったです。 ジョーカーがつくタイトルで続けるのにも限界がありますしね。 『絶対に正しい答えなどというものは、この世のどこにも存在しない。』 今見えているもの、わかっているものだけで判断した「正しいに近しい答え」はあるだろうけど、「絶対に正しい」は確かにないよなと思います。 頭ではわかっていても、つい自分の経験などから「絶対に正しい」と思い込んでしまうことがあるので、この内容は以前から定期的に自分にリマインドしています。 それでも時々「絶対に正しい」と思ったりするので、思考を変えるのは本当に難しいなと思います。 自分の思考を疑うためにも、自分の考えが間違っていることがあることを知っていることが大切なんだと思っています。 D機関の「D」がなんなのかもいまだにわからず気になっているので、次作も読みます。
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