
猿馬大咳
@sarubaaaaa
2026年9月6日
夏と冬の奏鳴曲 新装改訂版
麻耶雄嵩
読み終わった
さて、私はこの小説を自力で理解できたとは思っていない。解説も見ていない。他の人物の感想も、このアプリの簡潔なもののみを閲覧した。
それから寝起き。
私は色々書くけれど、そのどれもは、この小説の素晴らしさを表現できていないと、嫌ァな意味で断言できる。
構成にも触れるため、微ネタバレの香りを嗅ぐかもしれない。
久しぶりに、ミステリの真相にドキドキした。
まず、この作品には、探偵役が出てくるまでが非常に遅い。具体的に云うのならば、核となる彼の存在が初めてインクの上に立つのは表紙と、最後の二ページだけであり、それ以外では全く名前が言及されていないのだ。
探偵役は自ずと主人公になるのだが、自己を問う物語の都合上、彼もまた、抱える過去を考慮すると探偵として不適格になり、更に信用できない語り手という役回りに落ちてしまう。
この事件の探偵は、真の意味で存在しないのである。
その最後に現れる彼ならば、あの奇怪な館の惨劇を実際に解決して見せることも出来るはずだが、あえて彼を出さずして、事件を細部まで語り通したのは拍手を送らざるを得ない。
構成もどこか奇書的である。
五つ目の奇書としてこの小説が挙げられることは少なくないが、途中で別の本の引用が始まる点、視点人物が完全に三人称視点になり、映画の隅々を描き出して見せたり……果てはキュビスム、神性などの領域になり、物語は波乱を迎える。
こちらのすごいところは、若干理解しやすく仕立てているということだろうか? 同じ文章を繰り返したり、ある地点が視点人物によって強調されていたりと、そして全てを揺るがすために欠かせない要素であることは、云うまでもないことだ。
和音という存在が、至る所に散りばめられている。それは、和音館に齎された信仰であり、虚構であったことが実に虚しく描かれている。
感情的ではあるが、冷静な語り手。それに阻害されているだけで、かなり遅れて酷い結末に辿り着いた青春小説としても見れるのかなあ、などとも思ったりする。信仰の熱意や他の信者的な人物との関係性から、かつて和音やそのみんなが全てであった彼らがどれだけの人物であったかを推し量れるようになっている。
個人的には、和音は〇〇〇〇だったというのは納得できるが、他の皆様はどうだろうか?
というか、これに関しては途中で予測できたことである。ミステリをちょっと読んでるだけでも、法則というのは読めるのだなあと思ったりした。
それでもなお、そこから繰り返されるどんでん返しと、最後の二章の終わりを見届けた絶望は揺るがない。三年前に読んでいたのならば、これを世界一の小説だと言い張っていたレベルかもしれない。
普通に感想を書くと、ネタバレになり得るので、少し気取ってみた。最後もさることながら、最悪の小説であったことは云うまでもない。最高の最悪である。麻耶雄嵩を許さない。愛してる。ちゅ。
この衝撃をリアルで語れる人間がいないことに寂しさを覚えながら、今日は出かけるために、ここで筆を止める。
