
きらた
@kirata
2026年9月7日

帆船軍艦の殺人
岡本好貴
読み終わった
海洋冒険×ミステリ、と言っても、主人公(?)が“意気揚々と旅立つぞー!”ではなく、“誘拐されて強制的に水兵見習いにさせられた”、なので、読んでいてしんどく感じる方もいると思う
“水兵が足りないから補充しよ、でも皆嫌がって港じゃ補充出来ないから内地行って攫ってこようぜ!”→もうじきパパになる新婚ホヤホヤのネビルの幸せな日常の描写→ネビル攫われました、で、だいぶ情緒が乱れた私が通りますよ←アッ
そうじゃなきゃ話が始まらないとは分かっていても、幸せな生活から一転、絶望に叩き落とされるのを読むのは苦しい
そんな感じの始まりなので、手に取る方は心して読み始めてほしい←?
英国の戦列艦ハルバート号は寄港した港町で乗船員不足を補おうとしたが、ひとりも見つからなかったので、仕方なく内地に馬車を走らせ、一般市民を強制徴募した
その中にいたのがネビル
妻の出産を控え、幸せな日々を過ごしていた靴職人の青年だ
義理の父に誘われ寄ったパブで強制徴募に遭い、ハルバート号の水兵見習いとして徴用されてしまった
逃げ場のない劣悪な環境での危険で不慣れな労働、高圧的な士官による暴力の恐怖
忸怩たる思いを抱えながらも、船員仲間に支えられながらネビルは次第に艦内での生活に馴染んでいく
しかし、新月の深夜当直の甲板で、海兵が頭部を強打され死亡する事件が起きる
闇に覆われていたが、被害者の周りには複数の当直員がいた
しかし、誰ひとりとして犯行を目撃した者は居ない
被害者は如何にして殺されたのか
士官たちの中には、被害者が倒れ込んだ先にいたネビルを疑うものも居て──
この第1の殺人事件が起こるまでが長いのですが、事件が始まる前までの軍艦内の書き込み(人物描写や各々の関係性)が、最後の最後にあるネビルの逡巡にリアリティを与えてると思いました
慣れぬ環境に突然投げ入れられ、絶望しながらも生きようと必死になるネビル
しかし苦しいのはネビルだけではなかった
豪快に笑いながら生きる乗船員たちも、皆同じではないけど、皆それぞれに傷や理由を持っている
そんな彼らが共に過ごしていく中で起きる事件
喧嘩をするだけでも厳しい処分がある船上生活なのに、何故殺人が起きたのか
しかも、殺人は1度では終わらない──
読み終わってみれば、舞台や年代、展開や伏線やトリックが密接に絡み合うさまが素晴らしいミステリ作品だった
Whyは容易に想像がつくので、HowとWhoで読ませるミステリなのだと思う
図解があれば嬉しかったなと感じた面も無きにしもあらずでしたが、そこは読み手の問題か?
無理矢理連れ去られて水兵見習いとして働くしかなくなった主人公は、慣れぬ船上生活、厳しい環境で日々過ごしていく
公開される懲罰刑に戦々恐々とし、船上での訓練だけでなく、実際の戦いも経験する
目の前で死んでいくものたち
それだけでも心が挫けそうになるのに、殺人事件の容疑をもかけられてしまう
ネビルは無事に船を降り、家族のもとに戻れるのか?
船上生活の描写は読み手のメンタルも削っていくかも知れませんが、船上の過酷さを隠さず描いた海洋冒険小説としても、また、時代と舞台設定を余すことなく使ったミステリとしても凄いと思うので、気になる方は是非どうぞ!

