あおい "花菱夫妻の退魔帖 三" 2026年9月7日

花菱夫妻の退魔帖 三
シリーズ三作目。 想定より飽きずに読み進められています。 今回は淡路島が舞台で、神事が中心なのかと思っていたら、そのシーンは意外にあっさりでした。 幽霊騒動が今回もありますが、その背景がやるせなかったり、人の業の重さを感じるもので、色々考えさせられました。 淡路の君は怨霊に近いものしか喰わないのかと思っていたら、そうでもないのかもとうシーンもあったり。 今回も着物の描写を楽しめました。 柄を見立てるのとか楽しそう。 羽織と着物と帯と半衿と簪、アイテムが決まってるからこそ深いこだわりを持たせてられるんだろうなと思います。 鈴子はあまりコントラストの強い着物を着ないのと、今作は淡路島の温暖な気候の雰囲気もあってかやわらかい色味のコーディネートが多かったように思います。 初登場の人物が多かったのですが、鈴子の物怖じのしなさが遺憾無く発揮されていて読んでいてちょっと気持ちよかったです。 『「おまはんは恐ろしい御霊にえらい好かれとる。それがええことなんか、悪いことなんか、どっちに転ぶかはうちには見えん。ただ、おまはんが漕いで出ようとしとる海は、嵐や」 訊き返す間もなく、キヨはひと息に言った。鈴子はぽかんとするほかなかった。なにを言われたのか、すべて理解できていない。しかし。 「漕いで出ずとも、嵐は嵐でございます。わたしは、家のなかで嵐をただ見ているわけには参りません」』 この返しがするっと出てくる鈴子はすごい。 しかも理屈で考えずに返してるあたり、普段から鈴子にとっては当たり前の考え方なのだな、ということが伝わる文章だなと思いました。 孝冬の溺愛度も増してきているのですが、節度を持った接し方なので胸焼けしないところもよいです。 自分のことを当たり前の様に思いやってくれるし、度胸も行動力もあるし、そばにいたら惚れちゃうよね。 四作目は東京が舞台なのかな。
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