
(nigiwai)
@nigiwaiwayway
2026年9月10日
悪いことばの力
和泉悠
読み終わった
ネットなどで見られる誹謗中傷や謂れのない悪口を言う人について知りたくて購入。
「ことばは行為である」と言う前提をもとに、褒め、自慢、自虐、悪口の関係性という軸を用い、それらの発言を言う人、言われる人にどういった力が働いているのか、影響を与えるかなどを紐解いていく一冊。
個人的な話になるのだけど、僕が小学生くらいの頃に両親が離婚し、母子家庭で育った。
母が仕事を頑張ってくれていたのは目に見えて分かっていたし、たくさんの愛情を注いでくれていたことも感じていたので、ありがたいことに、父親の不在が気にならないくらいには幸せな家庭だったといえるだろう。
中学に上がった時、現代国語の授業にて例の「〇〇の気持ちを答えなさい」といった問題が出された。その「〇〇」の中には「父親」と書かれており、僕の家庭事情を知っているクラスメイト数名からは「お前父親いないから気持ちわかんねぇじゃん!」というイジりをされたのだった。
先に言っておくけれど、僕は特段このイジりをなんとも思っていなかった。事実ではあるし、父の不在を気にする必要のない環境を母に作ってもらっていたし、すでに離婚してから7年近く経っていたため、気にするまでもないことだった。
問題はそのあとである。
その日、家に帰るとクラスメイトの一人からメールが来ていたのである。そこにはこう書かれていた。
「あなたはあの時のイジり辛くなかったの?」
詳しく話を聞いていくうちに、その子の家は現在進行形で離婚の話が進んでいるということが分かり、そんな中で僕がイジられていたことを案じてくれたようだったし、これは憶測でしかないけれど、本人も不安になったのだと思う。
僕はその時、初めて怒りなのか、自分のせいではないけれど取り返しのつかなさというか、そういったもの感じた。
クラスメイトたちは僕のキャラや背景を知った上で、父親がいないイジりをしたのだけれど、それを聞いてよく思わなかった、その子と同じように悲しい気持ちになった人がいてもおかしくはなかったのである。
僕自身、自分がイジられていることで誰かが傷ついているかもしれないなんて思いにもよらなかった。
きっと、人は相手を傷つけずに生きることは不可能だ。仮に、自分がいくら気をつけていたとしても、相手は遠慮なく自分を傷つけてくるし、自分自身も知らず知らずのうちに傷つけてしまう。
この本のあとがきの中に出てくる「ノイラートの船」という例え話があるのだけれど、この船は一度港を出たあとはどんなに大規模な修繕が必要な出来事に見舞われようと、海面に浮かんだ流木や部品を再利用して徐々に修理を行いながら旅を続けるらしい。
そのあと筆者は「えんえんと小規模修繕を繰り返すのが人生です」と書いていた。
修繕、アップデート。
この社会で自分のことばが、相手にどんな影響を与えてしまうのか、相手からどんな影響を与えられてしまうのか。それらについて考えさせられる本だった。

