
りなっこ
@rinakko
2026年9月10日

聖餐城
皆川博子
読み終わった
再読。素晴らしい読み応え。1618年の窓外放擲事件に端を発するドイツ三十年戦争を、“馬の胎から産まれた少年”アディと、宮廷ユダヤ人の息子イシュアの数奇な物語とともに描く作品。
ドイツの内乱だった宗教戦争はやがて国際戦争となり、戦争によって戦争を養い、また新たな戦争を生む状態になる。誰にも止められない歯車は、迫害を受ける立場に置かれてきたユダヤ人に利益をもたらし、敵も味方も彼らの富に頼ることで戦争が続けられていく…という醜悪さを曝け出す。
アディとイシュアの繋がりは、物語の中の救いだった。戦争しか知らない30年を生き延びたアディの純粋さは、時に愚かさでもあったけれど、最後まで貫いた思いはやはり尊い。そして賤民として蔑まれる刑吏一家へ向ける眼差しは、踏みつけられる側の人々をいないことにしない皆川作品ならではだった。





