

りなっこ
@rinakko
寒がり変温動物。にょろにょろしている。本を読む。
アイコンは、以前お迎えした “わたくしは誰でもない。あなたは誰?” のエミリー。
- 2025年10月8日マーブル館殺人事件 下アンソニー・ホロヴィッツ,山田蘭読み終わった久しぶしに読んだアンソニー・ホロヴィッツ、頗る面白かった。満足。 主人公スーザンが巻き込まれるアラン・コンウェイ因縁の災いと、新たな書き手による作中の小説・名探偵〈アティカス・ピュント〉シリーズの内容とがリンクしている展開も大好きだ。
- 2025年10月7日マーブル館殺人事件 上アンソニー・ホロヴィッツ,山田蘭読み終わった
- 2025年10月6日ナボコフ・コレクション 賜物 父の蝶ウラジーミル・ナボコフ,小西昌隆,沼野充義読み終わった再読。「賜物」は、ロシア語で書かれた最後の長篇小説。自伝的な作品で、難解な方のナボコフだった(読み始めてから思い出したw)。 珍かな蝶をどこまでも追っていってしまった父のこと。 亡命貴族のフョードルが、故国の著名人チェルヌィシェフスキーの日記に出会い、ロシア革命を導いた人物の伝記小説を書くことになる…ところがナボコフらしい “ありがとう、祖国(オッチーズナ)よ、清らかな……そんな風に抒情詩の可能性が、耳元で歌うように閃いた。ありがとう、祖国よ、清らかな、なんらかの賜物を。”
- 2025年9月29日ダフニスとクロエーロンゴス,松平千秋読み終わった
- 2025年9月29日生誕の災厄 〈新装版〉E.M.シオラン,出口裕弘再読中少しずつ併読中“ラップランドから帰ってきた友人が、何日も何日ものあいだ、人影の片鱗にも行き合わぬときの息苦しさを語った。何が息苦しいのか、私にはどうしても分かりかねるが。”
- 2025年9月26日淡い焔ウラジーミル・ナボコフ,森慎一郎読み終わった再読。初読は富士川訳 素晴らしい読み応え。ゼンブラ物語に魅惑されて、誰かの妄想でも構わない。偉大な詩人Sの自伝長編詩『淡い焰』と、身勝手極まる註釈者Kによって付された膨大な註釈からなる〈小説〉。 纏いつくようなKの思惑を撥ねつけ無視した内容のSの『淡い焰』と、それを乗っ取らんばかりのKの解釈(そもそもKはどうかしている危ない人物)と、譲らず拮抗しているところがあらためて面白かった。“ゼンブラの栄光”と“あなたの韻文の栄光”が溶け合ったら… (索引もところどころ笑ってしまう。隠し場所とかw)
- 2025年9月24日生誕の災厄 〈新装版〉E.M.シオラン,出口裕弘少しずつ併読中“非の打ちどころのない形で、ポエジーというものを描き出してもらった例を、私は一つしか知らない。これはエミリー・ディキンスンの言葉なのだが、本物の詩を前にすると、彼女は猛烈な寒気(さむけ)に捉えられて、もはやどんな火も、この身を暖めはしないだろうと思うのだそうだ。”
- 2025年9月22日感情史トマス・ディクソン読み終わった以前読んだ『感情史とは何か』の内容がとてもよくて、感情史に更に関心を持った。こちらはわかりやすい入門書であり、また違う面に目を向けさせられる。 本来の「ノスタルジア」は致命的にもなりうる病気だった。目に見えない感情は教育や共同体の合意によって名付けられる。『イリアス』にある「怒り」が如何に現代のそれとかけ離れたものか。表面的なほほ笑みは、強いられた快活さで抑圧を覆い隠す(花嫁は絶望でいっぱいになりながら他人のために幸せを演じる)。 そして「愛」は感情なのか。愛が感情史の中心にあることを論証する章で、締めくくられる。
- 2025年9月19日セバスチャン・ナイトの真実の生涯ウラジミール・ナボコフ,富士川義之読み終わった再読。10年ぶり。面白く読んだ。ナボコフの英語での執筆第一作であることが念頭にあって、セバスチャンの言語的苦闘(V曰く“セバスチャンのロシア語は彼にとって英語よりもはるかによい、自然なものだった”)に触れる件などは印象的だった。 異母兄の真実を探し求めるVの書き記す覚束ない探偵ぶりは、セバスチャンの遺した作品の内容に呼応している。愛おしいはずの兄の輪郭は、事実を手繰って追うほどに茫洋とする(彼はもう書物になってしまった…)。
- 2025年9月16日ボルヘス怪奇譚集ホルヘ・ルイス・ボルヘス,アドルフォ・ビオイ=カサーレス,柳瀬尚紀読み終わった再読。「短くて途方もない話」からなるアンソロジーの一冊。 “あらゆる人食い鬼がセイロンに棲(す)み、彼らの存在すべてがただ一個のレモンのなかにはいっていることは、よく知られている。盲人がそのレモンを切り刻むと、人食い鬼は残らず死ぬ。 『インドの考古家』第一巻(一八七二)より”
- 2025年9月15日幸福はただ私の部屋の中だけに早川茉莉,森茉莉読み終わった久しぶしに茉莉さんに浸る。やはり大好きだ。こんな風に生きた女性がいたことを思うだけで、ふっくらと嬉しい気持ちになる。己の優雅を全うした人の言葉は、なんてゆるぎないことか。 贅沢な貧乏について、忘れられない浅草での嘘のない生活の話、『甘い蜜の部屋』の執筆がなかなか進まなくて苦しんだ話(モイラのことで頭が一杯…)、漱石のユウモアが楽しいこと…などなど、心ゆくまで堪能した。
- 2025年9月11日結晶世界ジェームズ・グレーアム・バラード,J.G.バラード,中村保男読み終わった再読。やはり好きだ。あらゆる生物、無生物が水晶化していく禍々しい幻想美の世界に魅入られた。 不穏で不安な冒頭から、ベックリンの『死者の島』のイメージが物語の先行きを暗示する。友人夫妻の身を案じて主人公が向かったのは、信じがたい変容を遂げつつある出入り禁止の地域だった。そこで森林はプリズムに煌めき、人さえも結晶に覆われていく。ここでの死は、宝石に封じ込められる不死性と隣り合う。 心のなかの“春分の暗い側”に陶然と傾いて、そのまま二度と元に戻りたくはない。グロテスクに病んだ硝子の森に魅かれてやまない。
- 2025年9月9日眠りの市場にて笹川諒読み終わった〈牛乳とレモンタルトの日々と呼ぶ読書が妙に楽しい時期を〉 〈箔押しのようにせつない馬と馬(こころの左端と右端で生きる)〉 〈青白く月はこぼれて神職を選んだユリスモールのその後〉 〈図書館と小雨の世界 カタルーニャ語辞典に大きな瞳があった〉 〈言霊と猫は似ている ドビュッシー「沈める寺」を聴きつつ思う〉 〈赤い龍、赤い月、銀河の音の十三番と占い師言う〉 〈冥府、と口に出すとき声は葉の緑それから夢の紫〉 〈この世のことはほぼ難しいうっすらと同時に思うレモン・巡礼〉 〈空自身が壊れぬように空がまだ試さずにいる一色のこと〉
- 2025年9月8日わたしたちが光の速さで進めないならユン・ジヨン,カン・バンファ,キム・チョヨプ読み終わった再読。4年ぶり。そこにあるのは遥かな未来や異星の眺めなのに、どこか懐かしさを抱かせてくれる優しい作風が好ましい。見知らぬ遠い場所への憧れと、人とは違う存在や異なる知性を慕ったり敬意を持つ人たちの話がとてもよかった。 とりわけお気に入りは、わからない相手のことをそのまま受け入れあうヒジンとルイの静かな交流が美しい「スペクトラム」や、リュドミラの寂しさが後をひく「共生仮説」、ジェギョンおばさんの選択がナイス…と思った「わたしのスペースヒーローについて」。
- 2025年9月8日生誕の災厄 〈新装版〉E.M.シオラン,出口裕弘少しずつ併読中生まれるという事実のなかには、はなはだしい必然性の欠如が見られ、平生より少しでも長くそのことに思いを凝らせば、どういう反応を示したらいいのか分からなくなったすえ、私たちの表情は馬鹿のような薄笑いに固定してしまう。
- 2025年9月5日新版 百珠百華塚本邦雄,尾崎まゆみ,塚本邦雄読み終わった素晴らしかった。葛原妙子作品の、百首遊行という贅沢な一冊。“すべての短歌は広義の本歌を持っている” として、古今東西へと“広義の本歌”を探し求めて手繰り寄せてくる教養に圧倒される。鑑賞にことよせてどこまでも塚本邦雄の世界が広がっていく…という印象もありつつ、葛原の幻視の眺めを解いていく様は流石に見事だった。 葛原妙子と塚本邦雄という稀有な才能の出会い、そこに起きた閃光を少しだけ垣間見せてもらったような。(相変わらず女性観は引っかかるけれどw)
- 2025年9月3日をとめよ素晴らしき人生を得よ瀬戸夏子読み終わった素晴らしい。「女人短歌」という歌誌のことは知っていたが、今まで研究が殆ど為されていないとあらためて知った。そも何故「女人短歌会」を発足させる必要があったのか。それは男性優位の歌壇では認められない女性歌人のため、その怒りと焦燥の故にだった。 彼女たちは其々に個性が強くて生き方もばらばらで、でも同志として繋がっていられたし、時には支え合いシスターフッドの歌も生まれた(胸熱…)。 一方で、片山廣子と芥川の件などはやるせない。男歌の「アララギ」に所属し続けた河野愛子についても、「女人短歌」からの影響も受けつつどんな思いでいたのだろうかと、その胸の内に思いをめぐらす。 付録のアンソロジーがとても嬉しくて、彼女たちひとりひとりの物語に歌が重なった。
- 2025年9月1日スカートをはいたドン・キホーテベニート・ペレス゠ガルドス,大楠栄三読み終わった頗る面白かった。リョサの評言に依る邦題に、なるほど…と得心。 主人公イシドラは、意に沿わない現実に否を突きつけ、自分は高貴な生まれであるという夢想のなかで生きていた。美貌に驕り庶民を蔑み浪費を重ねても悪びれず、踏みにじられることを拒んでプライドを守りぬく姿は、その点において天晴れだ。 そうして美しい理想を追い求めたイシドラにとって、逃れようのない「嘘偽りない事実」とは、信じてきた世界そのものからの裏切りだったに違いない。高貴な淑女に相応しくない現実を拒み、良識を拒み通したイシドラの、勇ましい奮闘と自由な精神よ。
- 2025年8月31日
- 2025年8月27日偏愛蔵書室諏訪哲史読み終わった
読み込み中...