芙蓉 "射手座の香る夏" 2026年9月11日

芙蓉
@fu_rong_28
2026年9月11日
射手座の香る夏
・十五までは神のうち p.128「死ぬってことは、この世界に残るってことだ。死体とか服とか玩具とか、出し損ねたままのラブレターとか、そういうものを全部残すということだ。」 p.128「もしも世界から消えるなら、冬の池に張った薄氷みたいに、一切の痕跡を残さずにいなくなるのがいい。なかったことに出来ない人生は、ぼくには気が重すぎる」 主人公は「巻き戻し」を選ばなかった人だけど、十五の自分だったら絶対に選ばなかったという自信は全くない。 p.106「子供って、すぐに死ぬとか殺すとか言うでしょう。命を軽く考えてるの。きっと、自分のことを神様か何かだと思ってるのね。」 この言葉を吐いた人物の行動には色々思うところがあるのだけど、これこそ大人の考え方だと思う。 子供の視野は狭い。社会に出ればもっと世界が広いことが分かる。 こういうことをよく大人が言うけど、今見えている世界が全てでその中で生きるしかないあの頃の自分からしたら何の助けにもならない言葉だ。 無気力だけど全身全霊だった。 そんな時にこの本で言う「巻き戻し」みたいに「そもも自分が生まれてこなかったら」と考えたことは実際何度もあったように思う。 ・射手座の香る夏 p.39「時には何時間もお喋りをしながら、香ばしい夜気のなかで、星を眺めていたものだ。射手座の匂い、と彼女は呼んでいたけれど、それが学校に植えられたラベンダーの香りだと知ったのは、卒業してからのことだった。」 ・十五までは神のうち p.175「海の向こうの夕暮れが近づいてくるまでずっと、セミたちはどこにもない夏の中で鳴き続けていた。」 ・さよなら、スチールヘッド p.294「鱒たちは川を下り海に出て、そしてまたいつか川へと戻ってくる。彼らが川を遡るのはきっと、そこに誰かと交わした約束があるから。」 ・影たちのいたところ p.355「東の高台に聳える鐘楼を見たとき、あたしは思った。今よりも特別な瞬間は、きっともう訪れない。今この瞬間が、あたしの人生のてっぺんだ。」 全編通してどこかほんのり暗さを感じる世界観で必ずしもハッピーエンドという感じもしないのだけど、瑞々しいこの世界の表現から人物の感情まで伝わってくるのが心地よかった。
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