
ユメ
@yume_bookworm
2026年8月22日

霧のむこうのふしぎな町 (新装版)
杉田比呂美,
柏葉幸子
読み終わった
感想
言わずと知れた日本のファンタジー児童文学の名作だが、私は子どもの頃に読むタイミングを逃してしまっていた。「いつかは読んでみたい」と思い続けるうち、この夏ようやく手に取る決心をして、ページを開いたらたちまち物語の虜に。
すぐれた児童文学は、何歳になってから読もうと読者を童心に返らせて楽しませてくれる。でも、もしも叶うものなら、主人公のリナと同じ年頃だった過去の自分にもこの本を贈ってあげたい!夏休みになると、学校がないのをいいことにせっせと図書館に通いつめていた小学生の私は、さぞ喜んだことだろう。
そもそも私は、子どもが夏休みにちょっぴり非日常的な冒険を通して成長する、という物語が非常に好きだ。
本書においても、リナは夏休みに家族と離れて「霧の谷」に滞在することになる。そこは何でもござれの不思議な町。下宿することになったお屋敷のピコットばあさんに命じられ、「めちゃくちゃ通り」の風変わりな店で順に働いてゆくことになったリナは、少しずつ逞しさを身につけてゆく。
リナの心が生まれ変わった描写として、これまでは見向きもしなかった「西にしずむ太陽の色」が好きになった、というくだりが本当に素敵だ。
奇妙だが心優しい人々、魅力的な古本屋、口の悪いオウムに大人しい虎、いくら食べても太らない美味しいお菓子に、四季折々の花が同時に咲き乱れる美しい庭——心躍るものの詰め合わせのような「めちゃくちゃ通り」での生活をリナと共に堪能し、彼女が「霧の谷」を去るときには私もすっかり寂しくなっていた。
だが、最後にピコットばあさんが持たせてくれたお土産の素晴らしいこと!ハッピーエンドのファンタジーって、本当によいものだ。



