
ケイ
@flyingkei
2026年9月13日
その昔、N市では
マリー・ルイーゼ・カシュニッツ,
酒寄進一
読み終わった
読了。ブクログにも以下感想掲載済み。
「勝手知ったる四面の壁の真ん中で、まぼろしに取り巻かれる」――不安、という感覚。それは必ずしも恐怖とともに訪れるわけではなく、夢想が招き寄せる場合もあるだろう。いずれにしても、「勝手知ったる」現実が、ふとした違和感、驚き、疑い、あるいは高揚、期待によって、見知らぬ異世界に音もなくスライドする。その異変を直視するか、見て見ぬふりをするか。物語の主人公によって選ぶ態度はさまざまだが、自らの選択に対する諦めにも似た受容がどの作品にも漂っていて、やるせなくも妙にリアリティのあるその着地点が印象に残る短編集だった。
個人的には「ロック鳥」の、突然の鳥の訪れは凶事なのか吉事なのか、受け止め方次第でもっと何か変わったのでは、そしてそのことを主人公も気づいていたのでは(だからこそ、「鳥は二度と戻ってこないだろう」というフレーズで終わる)という読後感が、尾を引いて胸に残った。