
Haruhito
@haruhito27_reads
2026年9月15日
車輪の下
ヘルマン・ヘッセ,
井上正蔵
読み終わった
田舎の神童が周囲の期待を一身に背負い、神学校に進学する。同級生をつぶさに観察しつつもとくに深くは馴染めず、やがて悪友との出会いからすっかり孤立を深めてしまう…。
読んでいて印象に残ったのは、束の間、勉学から離れて大自然に飛び出したときのハンスの子供らしい喜び、そして同時に色を濃くする孤独感である。実際、作者のヘッセ自身、将来を渇望されながらも神学校を脱走し、ノイローゼに苦しみながら自殺未遂を計ったことがあるらしい。それゆえにか、ハンスの物語に救いの兆しと悲劇の予感が同居しており、読み手の興味を逃さない。それに加えて、孤独を抱えているものの、ハンスは決して厭世的ではない。地元に戻ったハンスが出会う人々は通俗的な人々だが、しかしその通俗性をハンスは必ずしも疎ましくは思っていないようである。それどころか、教育から離れた場所にも自分の居場所を見出しそうな雰囲気がある。この小説では、エリート教育や社会的ヒエラルキーを否定し尽くすわけでもなく、かといって通俗を全肯定するわけでもない。ただ読者はハンスはどう生きればよかったのか、と心を痛める。フライク親方が言うように「この子にもっとしてやることがあったのではないか?」と彼の良き理解者になってあげたかった気持ちが読後もずっと尾を引いている。