
やん
@grilledyangyang
2026年9月15日
名画で味わうギリシャ神話の世界
有地京子
読み終わった
美術史の知識もなければ、絵画の審美眼もないので、こういう本は助かる。
ギリシャ神話そのものの解説だけでなく、アトリビュートや寓意、画家やパトロンとヨーロッパ時代背景や社会まで説明してくれるのマジでありがてぇ。
絵画をただ「美しいもの」として鑑賞するのも勿論素敵なんだけど、描かれた人物や小道具、色、構図、神話を拾っていくと、作品の主張や皮肉、社会風刺まで読めるんだな。
ヨーロッパのアッパー階級の風習として、新婚祝いにロマンティックな絵を贈ったり、パトロンや依頼主を神話の題材に絡めたり、神に扮して描く文化は面白い。
けど現代人の感覚だと、新婚の寝室用装飾画として、夫婦がモデルになった裸婦画とかエロ画を贈られるのイヤじゃない?(笑)
ギリシャ神話の解説・考察も興味深かった。
本書ではギリシャ神話を、母権制から父権制の社会へと移行する象徴と読んでいる。
オリュンポスの主神ゼウスと女王ヘーラーの関係性にしても、そうした社会構造の変化が見える。
ギリシャ先住民の大地母神だったヘーラーは、インド・アーリア語族の侵入により、彼らに信仰されていたゼウスが優勢になる。(※石井桃子編・訳『ギリシア神話』で語られていた天空神『父なるダイアーウス』のことだろう)
ゼウスがヘーラーと聖婚したことで取り込んだ結果、出産を司る大女神は嫉妬深いスケールの小さい女神に格下げされた。こうした経緯は、母権制から父権制へ社会が移行したと見ることができるのは面白い。
他にギリシャ神話が母権制から父権制への移行を象徴的に示す例として、知恵の女神アテナがゼウスの頭から産まれたことも示している。
原初の神が「大地の女神ガイア」であったが、父権制を象徴するゼウスが主神の座を奪った。男神がアテナを産んだことは、大地母神の権能(生殖)を奪い、男性優位社会が完成したことを示している、という。
また、女性蔑視の最たる例としてパンドラの神話が挙げられている。パンドラは後のキリスト教社会では、イヴとも関連して描かれた。男を惑わし罪と災いの根源である女性の象徴だ。
こうした古代ギリシャに端を発する父権制と女性蔑視思想は、ヨーロッパに受け継がれ、現在もなお引きずっている。そう著者の実体験を踏まえて書かれていた。
神話という荒唐無稽に思われる伝承は、当時の社会の価値観を映し出す鏡になっているんだな。
さて、ギリシャ神話の神々に視点を移すと、神々の序列関係がなんか思ってたんとだいぶ違ってワロタ。
アフロディーテとエロスって、ゼウスらオリュンポスの神々よりめちゃくちゃ古い世代だったの!?
エロスなんてカオスから産まれたガイア、タルタロスの弟という、原初の神々の一柱!そんな超古参の神が人間の小娘プシュケにあーだこーだされてんのウケる。
以下、興味を引いた神話などの備忘録。
・ゼウスって末っ子なの?
まあ、あの奔放さは末っ子っぽいっちゃ末っ子っぽいが。
・ギガントマキアにヘラクレス参戦してるとか、お前いつの世代なの???
もう時代とか伝承とかスターシステムで超越してて、これもうわかんねぇな。
・母ガイアを助けるため、クロノスが鎌でDV父ウラノスの男性器を切り落とす。すると、海に落ちた男性器の周囲にできた白い泡が集まり、愛と美の女神アフロディーテが生まれた。
は???
・ゼウスが息子ヘラクレスを不死にするため、眠っているヘーラーの乳を吸わせようとする。その流れも意味わからんのだが、さらに赤ん坊ヘラクレスがヘーラーのお乳を乱暴に吸ったせいで、乳が爆散して飛び散って天の川になった。
......つまり、どういうことだってばよ?
・ディアーヌ・ド・ポワティエ。アンリ2世の寵姫。アンリ2世より20歳年上で、王が19歳から40歳で亡くなるまでメロメロだった、ってどんな女性だったんだ。実質王より実権を持ち、公式文書に署名して国政に手腕を振るう。名前がすでにディアナ(アルテミス)なのスゴイ。名前を覚えておこう。
・西洋絵画においては、右側は正しい側、左側は悪の側という法則。
・聖母の衣装、慈愛の赤と、天上の真実を示す青。色彩そのものにも意味が込められている。
