#13 "スイートリトルライズ" 2026年9月16日

#13
#13
@unicorfin_13
2026年9月16日
スイートリトルライズ
“特別好きだとは思わなかったが嫌いでもなかった。” ‏9夜より ִֶָ ⊹ ࣪˖  突然自分の人生に現れたあの人と、気づいたら恋に落ちて、そしてそれが愛に育っていったあの頃を思い出した。  あぁ、いつだってきっと、出会いというものはドラマチックでもロマンチックでもなく、ありふれて愛しいものなんだなぁと実感する。彼との出会いが運命的な出会いなんかじゃなくてよかった。彼との別れもそうであったように。  そう思うけれど、今でもあの人の影をわたしは追い続けている。  きっと、わたしはあの人を愛しきれてはいなかったのだと思う。わたしは彼に、恋をしたままだったから。だから、彼の隣にいる間。わたしはずっと愛に満ち足りながらも、恋に飢えていたのだ。 “「なぜ嘘をつけないか知ってる? 人は守りたいものに嘘をつくの。あるいは守ろうのするものに」” ‏10嘘より ִֶָ ⊹ ࣪˖ ーまるで、言葉が胸の中で凍りついたみたいだった。 ー自分の言葉が自分の心臓を、うすっぺらな紙のように簡単にひき裂いたのを感じた。  相手を傷つけるとわかっているけれど、それでも嘘をつけないというのはどういうことだろうか。わたしは、彼女は「嘘はつけない」と言っているけれど、本当のところは「嘘をつかない」の間違いなんじゃないかと思う。本当のところなんてわからないし、こう思ってしまうのはわたしがそういった選択をしたことがあるからに過ぎないけれど。  秘密を明かすというのは、その責任を相手にも負わすということだと思う。嘘をつけない(あるいはつかない)というのは、明かしたことの全ての責任を半分こするということだ。  自分の過ちを曝け出すとき、相手に何を求めているだろうか。赦してもらう、償わせてもらう、あるいは。きっと、この二人はこの瞬間紛れもなく共犯者で、運命共同体だった。のではないかと思う。  彼女は、彼が傷つくことをわかっていながらこの言葉たちを投げかけたのだ。共犯者に、運命共同体に選んだのだ。このときは。  傷つけても良い、傷つけられても良いと思いながら相手の、そして二人の幸せを願うことは何も不思議なことじゃない。わたしはその二律背反を、アンビバレンスを愛しく思う。その瞬間を生きていると実感することができるから。  わたしはこれを恋だと思うけれど、彼女にとってはどうやら愛らしい。彼女は強烈に、どうしようもなく、身も世もなく彼を愛しているそうだ。  きっと、愛にも恋にもその人の数だけ形があって、相手の数だけ形があるのだ。彼女にとってこれは紛れもない愛の形で、もしかすると、わたしのあの人への想いも彼女からすれば愛だったのかもしれない。  そう思うと、あれは愛だったのだと言える気がする。  彼がわたしを愛していたと言ってくれたように。  まぁ、最後の最後に彼女は「あんなふうに恋をして、それをあきらめてまで」と言っているからやっぱりあれは恋なんだろうけれど。 · · ───── ·✧· ───── · ·  いつか、ソラニンの毒で死ねたらいいのにと思ったことがある。わたしが考えたそれは、好きな作家さんの作る大好きな世界の中で、こんなにも美しい物語の根幹になっている。いつか、心中したいと思えるほど好きな人ができて、その時が来たら。  そのときは、トリカブトと一緒にフグ毒も使おう。
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