芙蓉 "神鳥" 2026年9月20日

芙蓉
@fu_rong_28
2026年9月20日
神鳥
神鳥
篠田節子
"美しいものは恐くなければならない。恐いものは美しくなければならない……。" 文庫巻末の解説によると、1993年の単行本刊行時の帯のキャッチコピーとのこと。 身体が言うことを聞かないほどに心を制御できないほどに恐ろしいものを見て、フラッシュバックを起こしてもなお恐ろしいものの美しさに魅入られて、恐ろしいものに追い立てられるように描くことを止められない女性と書くことを止められない男性。 逃げられない恐怖に戦慄する。 ホラーと言ってもいろいろあるし民俗学系ホラーかなとか思っていたらまさかスプラッター系パニックホラーだったとは。 人物像がかなり時代を反映したもので…30歳を過ぎた女性やその家族、ノンデリ男性の描き方に最初は正直かなりの胸焼けを感じてしまった。 でもそれがこの本が書かれた時代のリアルだからと言い聞かせて読み進めたところ、葉子も美鈴も憎めなくなってしまった。いいキャラクターだ。 p.190「およそ生きものの感覚受容器官とはかけはなれた何物かだ。強大なちからを秘め、怒りに燃えながら、底知れない知性さえ漂わせた神の目だ。」 恐ろしいものを前にしてなす術もなく絶望する葉子はまた恐ろしいものに魅入られて生きることを諦められない。 p.223「目をつぶってかっこむ。臭みも脂気もない肉の一切れを奥歯で噛み締める。」 p224「食べなよ。食えるものは、怖くなんかない。」 敵を奥歯で噛み締めて胃袋におさめてやるような気概のある強い女性だ。 p.261「神経だってワイヤーのように図太い。それに私はあれの肉を食べた。食えるものに怖いものはない。私がある限り、美鈴も無事だ。」 恐怖と対峙して以降お互い別人になってしまった部分もある。それを受け入れて寄り添い助け合い生きていく。 覚悟の決まった女性の強さに惹かれる。 でも私は異界でよもつへぐいを思い出して食べられないかもしれないとふと思った。
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