でんぐりわたる "池袋高齢者暴走事故 遺族と加..." 2026年9月22日

池袋高齢者暴走事故 遺族と加害者家族の2060日
2019年4月に起こった池袋高齢者暴走事故について、その事故の詳細と今に至るまで、被害者遺族の松永氏、そして加害者である飯塚氏の長男との対話と取材の記録である。言わずと知れたこの「上級国民」による事故はさまざまなものを世の中に投げかけた。と同時に現代社会の有り様も浮き彫りにするものであった。高齢者の免許返納、遺族や加害者へのSNSでのバッシング、メディアスクラム等々。 被害者遺族は当然のこと、加害者とその関係者も壮絶な運命に巻き込まれたと言える。ただ、この事故という過酷な運命は彼らから大切なものをたくさん奪ったが、彼らは「目の前の現実から逃げない」という精神的な自由を守り通していた。彼らの言葉や行動からは、事故の当事者でもない我々も様々な悩みを抱えつつ日々をかけがえのないものと理解してどう生きるか、普遍的なものを投げかけられた。 加害者である飯塚氏もまた、相当な精神的な負担を強いられていたであろうことは想像に難くない。特に自分自身が築き上げてきた地位は、客観的な情報をもとにする計測工学の世界であるが、その事故に関する客観的な物理的情報が自分の感覚と相容れないという板挟みにあっていた。獄中で何を考えたか、そこはこの本からは直接的には読み取れず、なんとも残念であった。 本書は社会的に大きなものを投げかけた事故の記録であると同時に、それを取り巻く人々の心の闘いの記録でもある。重く、受け止めるべき本である。
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