やん "イスラームの歴史" 2024年1月9日

やん
やん
@grilledyangyang
2024年1月9日
イスラームの歴史
イスラームの歴史
カレン・アームストロング,
小林朋則
政治がキリスト教における「秘跡」であり、共同体や歴史そのものに宗教的意義を見出すのがイスラム教だ、という趣旨の話に衝撃を受けた。 日本はどうしても「宗教=個人の信仰」というイメージで考えてしまうけど、そもそもムハンマドが作った共同体は、宗教と政治と社会が分離していない。本来のイスラームは、専制や血縁による優遇を認めず、弱者を救済し、神の前に人間は平等、思想の寛容を重視する。 ムハンマドを最後の預言者とするのも、ハディースやシャリーアも、イスラームが創始された最初からあったわけではなく、クルアーンのみを規範としていた。後世の共同体が、ムハンマドの言葉や行動、クルアーン、慣習などを解釈し、整理し、制度として積み上げていった。 そもそもムハンマド自身、新しい宗教を一から創始するつもりだったわけではない、という説明にも驚いたと共に、キリスト教の成立過程と同じ流れてを辿っているな、と気づく。本人が活動している時点では、後世の人間が「宗教」として整理するほど完成された体系ではない。そこから共同体が記憶し、解釈し、教義化し、制度化していく。 ムハンマドが作った共同体は、当時の殺伐とした部族社会に平和、平等、弱者救済、共同体としての規範を与えようとした。 ところが、あまりにも理想的だったというか。それまでの部族社会の慣習を完全に塗り替えるには、ムハンマド一代では時間が足りなかった。結果として、イスラムの普遍的な共同体理念と、従来のアラブ部族社会の血縁や習俗との間で、ずっと葛藤していくことになる。 また、原理主義はかなり近代的な運動だという。彼らは伝統の守り人ではなく、近代化や西洋化、社会の急激な変化に対する恐怖から、反動的に伝統を歪めている。 こういった流れはイスラムに限った話ではなく、あらゆる宗教や思想の通過儀礼と言えそう。 人が教義や神話を恣意的に作り、解釈し、伝統として積み重ねてきた歴史。それこそ人類の固有能力であり、「伝統」そのものなのだとしたら、業が深すぎるよ、人類。 さらに興味深かったのが、イスラムの規範と近代化の関係。 クルアーンに示された思想、それ自体は近代民主主義や自由主義と響き合うように見えるものもある。少なくとも、「イスラムと近代社会レジームは本質的に相容れない」と単純化できる話ではない。 一方で、イスラム世界をめぐる西洋中心主義、偏見、二重基準への反発が、現代イスラム主義を生んでいる。 多様な宗教と国家の共存体制と、イスラームの規範と近代化の新しい地平を、全体で模索する必要はあるのかも知れないが、それには西洋中心主義もイスラームを特別視することも排除しなければならない。今の世界でそれは既に困難な道になっている気がする。
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