
くにっち
@kuni
2026年9月23日
ノーラン・ヴァリエーションズ クリストファー・ノーランの映画術
トム・ショーン,
富原まさ江,
山崎詩郎,
神武団四郎
読み終わった
いま公開してる映画『オデュッセイア』の監督、クリストファー・ノーランの映画作りについて書かれた本。めちゃくちゃ面白かったです。
テキストの分量が多いのですが、基本的には監督になってからの作品について時系列で書かれているので、観た映画の章だけ読んでも十分面白いと思います。
制作にあたって当たり前のように1920〜30年代の映画も参考にしているところは、西洋の古典を重視するイギリスの寄宿学校や伝統的な名門大学(UCL)で学んだことが影響してそうだと思いました。
個人的には『ダンケルク』の音楽について書かれた箇所が印象に残りました。この映画に使われているのは基本は2つで、ひとつは最初から110分流れるリズムを中心とした曲で、もうひとつは最後に10分流れるエルガーの「エニグマ」。
前者は、無限に音階が上がり続けるように聞こえるシェパードトーンを手法として取り入れ、兵士、船員、パイロットの3つの視点にあわせて3種の拍子で演奏し、最後の見せ場である、海上で油が燃えるシーンで同時にクライマックスを迎えるようにしたと。
読んでから映画を見返すと、確かに緊張感の高まりがとても効果的に演出されているように感じられます。
後者は、曲をのばしたりひずませたりしてメロディがはっきりとわからないように変化させながらも、所々でピントを合わせるようにメロディを際立たせたと。要は波の音と機械音と音楽を溶かすようにして、音楽と音響デザインの境界線を曖昧にしたと。
これにより、『ダンケルク』は編集、録音、音響編集、でオスカーを受賞しています。
ただし音響編集で受賞したリチャード・キングは、音楽編集のアレックス・ギブソンも受賞メンバーに入れるべきと言ったそうで、音響編集には音楽と音響効果の区別がないことを示していると。
ノーランいわく「手がけたなかで、『ダンケルク』は音楽、音、映像が最も緊密に融合した作品」とのこと。
■その他メモ
・登場人物の罪の意識は、ドラマを動かす強力なエンジン
・映画における倫理はたいてい視点によって特徴づけられる
・物事には二面性があってこそ面白くなる
・撮影方法は時代とともに変化するが、いつの世も映画監督は構図という本質的な問題と向き合うことになる。一人称視点の映画が滅多にうまくいかないのはそのせい(例:『湖中の女』(1947))
