uruoh "千個の青" 2026年9月23日

uruoh
@uruoh
2026年9月23日
千個の青
千個の青
カン・バンファ,
チョン・ソンラン,
坂内拓
AIがより進化しヒューマノイドが当たり前に存在している世界が背景。そこではコンビニのバイトは勿論、競走馬の騎手までも専用のヒューマノイドが存在している。人間より軽量化されているのでより馬が早く走れるというわけ。ひょんなことから、製造過程で騎手用の内蔵チップの中に認知能力と学習能力の備わったヒューマノイドの内蔵チップが紛れ込んでしまい、騎手には不釣り合いなスペックのロボット「コリー」が生まれる…というところから物語は始まる。 ヒューマノイドなんて近未来的!と思うかもしれないけど、テクノロジーが発展しても動物(馬)への扱いは変わらないという点をはじめ、「そこは発展しないんだ」と思わされるシーンが多く、それが物語にリアリティを持たせていた。どんなに発展しても、理性の果てには人間のためだけの合理性だけが残る、ということなのかもしれない。 コリーを取り巻く人間は非常に多いのだけど、その中でも中心的人物の1人である姉妹の片割れ、ウネがそれを象徴している。 彼女は生まれながらに下半身の神経が麻痺しており物心ついたときから車椅子生活。SF小説なので優れた義足はあるけど、ウネの両親は片親で貧しく買うお金がない。 ウネが「自分は自由だ/社会が不自由にさせてるだけ」(意訳)と心内で本音を溢すシーンがある。必要なのは自由に歩ける足ではなくて、車輪に優しい滑らかな歩道と、車輪でも登れる段差や階段なのに、テクノロジーが進歩しても弱者のためのインフラは一向に整わない…というのは非常に示唆的だと思う。 「弱者のための進歩じゃない、強者をより強者にさせるだけの進歩(であり技術)」という一文は痛烈で心に残った。 そんなウネにも、妹ヨンジェ、母ボギョンにも、ドラマがあり苦悩があり白黒つけられないままならさがある。馬のトゥデイ🐎含めそんな登場人物たちを、コリーが光ある方へと導いていく話。どんな結末になるのかはぜひ読んで知ってほしいところ。 この本で大好きなシーンや台詞が本当にたくさんある。 なかでも話の核となる「幸せだけが恋しさに勝てる」という言葉はどんなときも忘れないでいたい。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved