
やん
@grilledyangyang
2026年9月23日

読み終わった
一昔前の歴史小説を読むような感覚で、トロイア戦争の全体像を追えた。
ホメロスだけではなく、ギリシャ・ラテンの古典を組み合わせて再構築した本書。全然知らんエピソードが次々出てくる面白さ。図書館で借りたけど、買おうかな。
前日譚からして知らない話が多い。
テティスとペーレウスの婚礼、パリスの美人判定くらいは知っていたけど、その前にテセウスとペイリトオスによるヘレネー誘拐。その報復としてディオスクロイによるヘレネー奪還の際に、略奪されたテセウスの母アイトレーがヘレネーの侍女になってたり、テセウスが冥界に囚われて後にヘラクレスに救出されたり。
......え、待って。読み流すところだったけど、ヘラクレス出てきてた?スターシステムかよ。
ギリシャ神話の有名英雄の名前が、まあ出るわ出るわ。
ギリシャ神話における「英雄の時代」って、思っていたよりずっと狭い範囲に詰め込まれているな。
ペルセウスやベレロポーンなどの王家を始めた古い英雄から、ヘラクレス、イアソン、テセウス、ペーレウス、ディオスクロイらアルゴノーツの世代を経て、ヘレネー、メネラオス、アガメムノン、オデュッセウス、アキレウス、ヘクトール、パリスらのトロイア戦争世代へ。
ペルセウスからパリス辺りまでが、3〜5世代(100〜150年)なんだな。
神話の英雄時代、結構短くない?
そして、次代がネオプトレモス、テレマコス、オレステス。ここが「神話の時代」の終わり、ってことなんだろうか。
※ペルセウスはヘラクレスの曽祖父、テセウスとヘラクレスは一世代差(30年くらい?)。テセウスがヘレネを誘拐した時の年齢は、テセウス50代、ヘレネが結婚適齢期より幼い(10〜13歳くらいか?)
だとしたら、ギガントマキアにヘラクレスが参戦しているのやっぱりおかしすぎるやろ。
もっとおかしいのがディオスクロイ。
こいつら、ヘレネとクリュタイムネストラの双子の兄弟なんだけど、なに普通にアルゴー船に乗ってるの???
いや、待って。ポリュデウケースはヘレネーの双子、どう考えてもトロイア戦争世代だろ。
なのに、アルゴナウタイ!?
やだーーー!!!!
ギリシャ神話、頭混乱するぅ!!
人間が時空を超えて主張してくんな!!!
そもそもアルゴー船の冒険って、もっと昔の話だと思っていたのに、トロイア戦争からそれほど遠くないところに置かれているらしい。
さらに、ヘレネーの求婚者の中にアキレウスがいない。
なぜなら、まだ若すぎたから。
つまり、ヘレネーの結婚(適齢期より幼い)時点ではアキレウスは少年だったらしい。
一方、その前の英雄譚ではヘラクレスやディオスクロイが大活躍している。
お前ら、年齢どうなってんだよ。分からん、なにも分からん......
誰か、一度英雄たちの年表を作ってくれんか?
ヘレネーが結婚した時、メネラオスの描写『金髪をなびかせ、目は青く、まだうぶ毛を残し、すらりと伸びた脚で体を運ぶ』ということは、メネラオスもまだ十代の可能性あるのか?もっと年齢差あると思っていた。そして、ヘレネがパリスに連れ去られるまで10年。
もしかして、ヘレネよりパリスが歳下の可能性が微レ存???年若い青年を誑かすヘレネ、罪深いな。
そこからトロイア戦争が10年。
そう、戦争開始がヘレネ掠奪から10年後っていうのも驚いた。すぐギリシャ勢がトロイに侵攻したものだと思ってたわ。
ということは、ヘレネーもパリスもイーリアスの頃にはかなり年齢を重ねていることになる。
パリス、クソガキのイメージがあったが、ひょっとして思ったより若くないのでは?DQN中年なんてさらに嫌だろ(笑)
そしてトロイア戦争の後半、ネオプトレモスの参陣が熱い。日本では全然知名度ないと思うんだけど、亡き父親の代わりに颯爽と現れて武功を示す「次世代の英雄」の登場。激アツポイントじゃない?
まあ、トロイア陥落時の所業には普通にドン引きなんだが。アキレウスの性格も大概だけどね。
オデュッセウスも、パラメデースやアイアスの件など、結構やらかしてんな。
個人的にかなり気の毒だったのが、リュキア人スキュラケウス。
あれだけのことがあった末に、ようやく帰ってきたに、なにも殺さなくても。可哀想。
そういえば、スキュラケウスの私刑が石打ち刑だったけど、戦場でもみんなカジュアルに石投げて攻撃してるな。しかも石で頭蓋を吹っ飛ばすとか、威力強すぎんか。それとも、想像以上にデカくて重い石を剛速球で投げてんのか?
オイノーネーはパリスを殴っていい。
パリスはホンマにダメ男すぎる。
死の間際に捨てた元妻に縋って「そんなこと言うなよ〜いつまで嫉妬してんだよ〜過ぎたことじゃんよしよししてよ〜」って、ヤバすぎだろ、お前どんだけバブちゃんなんだよ。
パリスがブロークンハートでオイノーネーに拒絶され、ヘレネの元にも帰り着かずに力尽きたのは、最大のスッキリポイントかも知れない。ザマァ。
ヘレネーもヘレネーで、オデュッセウスを幇助してパラディオーンを盗む件に関わるとか、バカなの?最初から最後まで戦犯だな。
まあ、パリスと駆け落ちしてトロイまで来たのに、パリス亡き後には本人の意思とは関係なくデイポボスと結婚させられて、どうでも良くなっちゃったのかな?愚かだけど、英雄のトロフィーとして人格を無視して扱われ、哀しい女性だったな。
とはいえ、メネラオスとヘレネーが最後に打ち解けるのは、納得できんくない?ヘレネの保身でしかなくて本当にクソ。
そして結局、トロイアを滅ぼしたギリシャ勢も、めでたしめでたしでは終わらない。
神々や人間たちの怨みを買い、帰路で次々と災難に遭い、ほとんど全滅状態で故郷へ戻る。
アガメムノンは帰国後、妻クリュタイムネーストラーに暗殺され、散々やらかしたオデュッセウスはさらに10年間彷徨う。
英雄たちが積み上げた栄光も、名誉も、勝利も、一瞬の閃光である。
人間の世など移ろうもの。
語り継がれる名誉、儚き生命の輝きも、自然や神々や運命に翻弄される。
トロイア戦争とは、英雄たちが栄光を求めて戦い、その栄光と運命に人生を食い潰されていく物語なのかも知れない。
そこには、どこか日本の無常感に似たものを感じた。
