
きらた
@kirata
2026年9月25日
パラサイトグリーン --ある樹木医の記録
丹地陽子,
有間カオル,
朝宮運河
読み終わった
『ボタニカル』を改題·改稿した作品との事です
雨宮芙蓉は樹木医であるが、心療内科医の朝比奈匡助の依頼で“植物に寄生される未知の病(通称ボタニカル病)”に罹った人の診察も行っていた
樹木医としてはまだ経験も浅く、主な仕事は“ある施設の庭師”として定期的に樹木の手入れをするだけの雨宮
本来の業務とは異なる“ボタニカル病の診察”を受けているのは、朝比奈の強引さもあるが、雨宮に特殊な能力〜父親譲りの力〜があるからだった
公には公表されていないこの病を、国内で唯一研究している朝比奈
そんな朝比奈の研究に付き合っていた雨宮の父は、ある日朝比奈の手伝いを放棄し旅に出かけてしまった
それで、娘である雨宮(芙蓉)にその役割が回ってきたのだ
──そして、雨宮はボタニカル病の患者と向き合い、患者たちの内面、抱え込んでいる苦悩と向き合い、耳を傾ける‥
病に罹った患者との対話は仄暗さを纏い、読者を幻想的な世界へ導いていく
物悲しさを孕んだ淡い闇
ライトノベル系の甘さも含めて、何処か後ろ暗さを感じながら浸る世界の心地良さ
虚構の世界を巡る旅ととしてはかなり満足出来る作品
ミステリではあるけれど、ミステリさを纏った幻想的な話と言うのが私的には正しいように感じた
ラストは切ないと言うか、遣る瀬無さが溢れるが、それは、読んでいる中で知らず知らず朝比奈に肩入れをしていたからだと思う
章が(話が)進むにつれ、作中で雨宮が言うほど朝比奈は独善的な人物には見えなくなって行き、朝比奈のどこか歯切れの悪い言葉に疑問を感じ──
だから、最終話(最終章)で明かされ、散りばめられていた伏線が繋がる真相に痛みを抱いてしまった
与え続けられている無償の愛に気付けず、気付いてもまた失われていく
──いい夢なら、いつも見ているじゃないか──
序盤で漏らした朝比奈の言葉が、読み終わった後に胸を打つ
真相を知ると発した言葉の印象が変わる
そして、胸中の苦しみを現さない態度に、朝比奈の強い決意と思いの深さを感じるのだ
本作はゆらゆらと揺れながら幻想に沈んでいくような終わり方に思えたので、スッキリした話を好む方にはオススメ出来ない
けれど、たまにはこんな世界の中に揺蕩ってみたい日もあるのだ
そんな意味ではとても肌に合う良い作品だった
