
みーる
@Lt0616pv
2026年9月26日

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読み終わった
阪神の監督といえば、岡田監督。そう思う人は多いだろう。自分もその1人。生まれた時から阪神ファンだが、2023年の優勝は本当に神がかっていた。
岡田彰布監督ほど人間的な魅力に溢れる人はそうそういないと思う。独特な言い回しや口癖、ユーモアセンスもさることながらその根底にあるのは勝負に徹することかもできる強さ、そして阪神タイガースへの底しれぬ愛情だろう。
岡田監督を親しい距離で取材してきた西岡さんが書かれた本著。非常読みやすく、熱量が伝わるような書き方で400ページ以上あるがあっという間に読んでしまった。
やはりすごいと感じたのは岡田監督の本質をつく研ぎ澄まされた野球観。特に、守備からチームを作り、エラー数を気にするのではなく、取れるアウトを確実に取るために連携プレーを徹底する。一つ先の塁に行かせない。思い返してみると2023年の阪神の守備は質の高い中継プレーと中野、木浪によるダブルプレーが多かった印象が強い。また、一点を確実にとるという手堅い野球。奇策はほとんど用いず、打順に応じた役割を求める。2023年の打線で突き抜けた成績を残した選手はいない。佐藤輝明も20本くらいだった気がするし森下もチャンスに強いが率を残しているわけではなかった。「追い込まれてもベースの大きさは変わらない」とフォアボールの重要性を説き、それぞれの役割に応じたプレーが徹底できていたからこそぶっちぎりで優勝できたのだろう。投手力はそもそも高かったが、打線に波があり、勝ちきれなくて2位や3位で終わる阪神の姿はなく、常に優位に試合を運べていた。
選手とのコミュニケーションを直接取ろうとしないのも岡田監督なりの考えがある。組織である以上、特定の選手に対する情は時に全体のバランスを乱すことになる。あくまでも選手を駒として扱い、チームが勝つための采配をする。
全ての選手が岡田監督のスタイルに合ったわけではないが、全く気にする素振りも見せず、自分の信じた道をいく。そして結果を出す。
だが、本作を読んでいると選手を駒として考えているというよりはむしろその選手の未来のことまでしっかり考えているように思えた。選手の特徴に合った役割分担や指導するときはこっそり指導したり、4番の大山を5番に降格させるときには、他の選手も打順を替えたりすることで「自分だけ」と思わせない選手心理を考えた配慮。選手への愛情を感じる監督でもある。
印象深かったのは2024年のキャンプ始めで「今年は選手の力で勝つ」と言った選手に対して岡田監督が危うさを感じた件だ。それは裏返せば2023年は「監督の力で勝った」と選手たちが思っているということ。岡田監督は「監督の力だけでも選手の力だけでも勝てない。団体競技である以上は」と述べている。奇しくも2023年ぶっちぎりで勝ったことが選手の個人的な責任感を助長する結果になったことは2024年のシーズン始めでは誰も予想できなかっただろう。
伝説的なシーズンの2023年、うまく歯車が噛み合わなかった2024年。勝ち方も負け方も知った選手が戦う2026年。2025年は、藤川監督のマネジメント能力がふんだんに発揮され佐藤や森下が覚醒。村上の復活、石井の日本記録などで史上最速優勝。2023年岡田政権を見ているようだった。そして、2026年現在、M4。2位巨人とのゲーム差2.5。戦力差を考えればもっとやれると思うかもしれないが、連覇の難しさ、歯車が噛み合わないながらも優勝争いをしているのは2024年に似ている気もする。あのとき連覇ができなかった選手たちが多く残っていることが、何よりの財産だと思う。岡田彰布監督が残した2年間。選手の意識を変え、勝てるチームのメンタリティと育て、阪神タイガースを38年ぶりの日本一に導いた。その功績は退任した後も阪神の根底に残り続けている。やっぱり岡田監督が大好きなのだと改めて思えるような一冊だった。